ショートノベル | ナノ


俺だけ


「ブスがどれだけ女子力を出そうとブスはブスだろ」


人を見下したような笑みを浮かべて、花宮は言った。
その言葉は、きっと女の子が聞いたら顔を真っ赤にして言うだろう。「最低!」と。「酷い!」と。
けれど、性格の悪い花宮は。人の苦しむ顔、不幸を見て楽しむ花宮は気にせず嗤うだろう。「バァカ」と。


「花宮は恋人が出来なさそうだね」

「はぁ? 別にそんなもん俺は、」

「俺以外には」


そう言って俺は花宮の口に口づけた。
ちゅっとリップ音がなるように。
すると、ぼけっとした顔で固まって、花宮は耳まで真っ赤にして怒る。


「クソッ、進テメッ・・・!」

「花宮かーわい」

「ちょっ、やめろ進! 抱き着くな! ここをどこだと思ってんだ、学校だぞ!?」


どんなにクズでゲスで残虐な花宮も、俺には世界一可愛い生物に見えるんだ。
人はそんな俺に『おかしい』と言うけど、俺からしてみれば、こんなに可愛い花宮をどうして可愛いと思えないんだ、と。花宮をかわいいと思えない奴こそ『おかしい』、と思う。
でも、別にいいかなとも思うんだ。
だって、俺しか花宮の可愛さに気づいていないと言う事は、俺だけが花宮を独占できるという意味だろ。
俺以外の奴は知らなくていい。
俺だけが花宮を愛して、俺だけが花宮に愛されればいいんだよ。


「世界一、誰の命よりも大事な俺の花宮・・・愛してるよ」

「ッ・・・! 進・・・、俺も・・・・・・。って言うとでも思ったか、バァカ! 死ね、さっさと離れろ!」


顔を真っ赤にして言っても説得力がないよ。・・・なんて言ったらきっと殴られるから、俺は静かに微笑んだ。

俺だけ


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