ショートノベル | ナノ


君の寝顔


「ん〜・・・このまいう棒、うまい〜」

「・・・はぁ」


月曜日第6限。英語の授業中。
私の隣では、幸せそうに眠る紫原敦ことむっくんの姿。私は溜め息を吐く。
確か、前の国語の時間にも寝てたような・・・。よく寝るな〜・・・なんて思いながら、さっきからむっくんを観察してるけど、一向に起きる気配がない。沢山寝てるからこんなに背が高いのかな。
っていうか、こんなに授業聞いてないのに成績良いとか意味が解らないよね。


「赤ち、ん・・・」

(誰だろう)

「ミドちんはお母さんみたいだし・・・」

(むっくんが子どもだったら大変そうだな、その人)


不思議な寝言ばかりを呟くむっくん。
・・・さっきから、先生がこちらを見てる気がするけど、関係ない。私を見てるわけじゃないから。
むっくん、起こした方がいいのかな? でも。


「夢ちん・・・」

「むっくん・・・?」

「大好きだ、し・・・」

「・・・もう、」


どんな夢見てるのよ。
私は静かにむっくんの髪を撫で、クスっと笑う。
こんなに幸せそうに、デカイ体には似つかない可愛い顔した寝顔の君を。


「起こせるわけないじゃない・・・」


とりあえず、この時間だけでも寝かせておいてあげようかな。なんて。
私はむっくんから前の黒板へと目を向け、ノートをきちんと取る。勿論二人分。むっくんが起きた時、ビックリするだろうなあ。


君の寝顔

(なんで起こしてくれなかったの夢ちん〜)
(なんでだろうねえ)
(なにそれ、意味わかんねぇし)
(いいよ、むっくんは分からなくて)

私が分かれば、いいんだよ。

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