暑くて熱い昼の出来事澄み渡る青い空が窓の外に見える午後。 昼食も終えて、それぞれ巻物を読んでいたのだけれど、いち早く終わったナルトくんが、私を背後から抱きしめてきた。 寂しい……のかな? 時々こうやってナルトくんは甘えてくる。 長期任務のあとなんて、それこそ一日中ベッタリ。 晴れて恋人同士になった私たち……うん、恋人同士という言葉にも照れが生じなくなったくらいの月日は流れているんだけど……でも、未だに彼からのスキンシップに慣れない。 だって、やっぱり……その……ナルトくんの醸し出す雰囲気が大人で甘くて……胸がいっぱいになってクラクラして……そ、その……私にはやっぱり慣れるなんて難しくて…… そうこう考えている内に、全く手につかなくなった巻物はそのままに、意識がナルトくんへと向く。 彼もわかっているのか、ゆっくりとした手つきで、私のお腹の前で組んだ手に力を込めた。 「ヒナタって、甘い匂いがするってばよ」 耳元の熱い吐息に、くらりと意識を持って行かれそうになり、思わず目を閉じると、リアルに彼の動きを感じることができた。 それはそれで……マズイんじゃないかな……私。 耳朶に触れてくる唇は、甘い声で私の名を囁く。 「な、ヒナタ……もっと触れていい?」 理性で本能を抑えている男の人の声……。 一瞬にしてぞくりと肌が粟立ち、肌が赤く染まる。 や、やだ……そんなこと聞かないで……恥かしい……よ 答えられずに赤くなる私に、ナルトくんは笑みを深めたようで、先ほどより艶を含んだ声でさらに追い討ちをかけてくる。 「ヒナタに触れたい……」 抱きしめているだけでは足りないと、暗に告げられ、私は泣きそうになりながら唇を噛んだ。 そうでもしないと、きっと声が漏れちゃう。 ひくりと反応する私の体に腕を回しているのだから、わからないワケではないだろうと思うのだけれど、こういう時のナルトくんは意地悪。 お腹の前で組んでいた手が解かれ、ゆるりと太ももを撫でふくらはぎまで滑っていく。 その手の動きが何かを確かめるような動きで、普通に撫でられるより恥かしい。 「な、ナルトくん……ま、まだ……私……巻物……」 必死に言葉を紡ぐ私の手から、ナルトくんは巻物を取り上げ、そして後方へと放り投げた。 「な、ナルトくんっ」 「オレを見ろってばよ」 どうやら巻物に嫉妬したらしい…… えっと……ナルトくん、巻物に嫉妬は……ないと……思うよ? 彼の唇が私の耳朶を食み、熱い吐息を流し込んでくる。 だ、駄目、ま、まだ昼なのにっ するりとわき腹を撫でる手は、肝心なところに触れることはなく、じわりじわりと私を追い詰めていく。 足と腹部や腕……首筋を撫でる手と指先……熱はどんどんたまっていき、容赦が無い。 「あ……あの……ナルトくっ……」 言葉は途中で途切れ、大きく仰け反ると、私は甘い吐息をついた。 それに触発されたのか、ナルトくんが私を床へと押し倒す。 熱気で生ぬるく感じる床を背に感じ、見下ろしてくるナルトくんの顔を見つめる。 あ……やっぱり、そ……その気になった……目……だよね。 「ま、まって……だ、だめ……」 「待てねーってばよ」 「で、でもっ」 「ヒナタ……お前のすべて、オレにくれ」 「い、いつも……あげてる……よっ」 「じゃぁ、いいよな」 「ナル……っ!……はっ」 極上の甘さと男の魅力に溢れる笑顔を見せ、私の首筋に顔を埋めるナルトくんをとめることも出来ず、私は知らず知らず出てしまった甘い声をどうにかしたくて手で口元を押さえた。 恥かしい……どうしようもなく恥かしい…… 首筋をもう慣れてしまった感触が這い、吸い上げる中、目を閉じる。 結局私はナルトくんに勝てないようで…… 熱い日なのに……部屋は窓開けっ放しで、風が通っているけど、気温が高いのには間違いない。 「だ、だめっ……声……外にっ……」 何とか止めたくて手を動かし、ナルトくんの肩を掴もうとするけど、反対に押さえ込まれて顔を覗き込まれた。 「声……聞かれたくねーか」 「う……うん……」 「オレも、お前の声、他の奴に聞かせるのは嫌だってばよ」 「じゃ、じゃぁ……」 良かった、わかってくれたんだ…… ホッとして笑みを浮かべた私に、ナルトくんは私以外の誰も見たことがないであろう妖艶な笑みを見せてくれた。 「声我慢な?」 「え……」 「だから、声我慢してくれってばよ」 言われている意味を理解した私は、それこそ必死に首を左右に振る。 「む、無理っ、無理だよナルトくんっ」 「やるまえからできねーって……」 「だ、だって、ナルトくん加減してくれないし、意識飛んで何しているか自分でわからないんだものっ、声我慢なんてできるわけ……あ……」 ただ止めてもらいたい一心で言葉を紡いだ私は、とんでもなく恥かしいことを言っていることに気づき、思わず泣きそうになる。 いますぐココから逃げ出したいっ でも、握りこまれ押さえつけられた手、圧し掛かられている体、絡んだ足……逃げる事なんて叶わなくて、恥かしさのあまり目じりに涙が浮かんだ。 「そっか……気持ちよすぎてわけわかんなくなるんだな……そりゃしょーがねーか」 ニカッと嬉しそうに笑うナルトくんの爽やか過ぎる笑みに、私は視線を逸らして答えずにいたら、耳元に息がかかり小さく呟かれる。 「寝室行かね?そこだったら、ここより涼しいぜ?窓開けなくてもさ」 寝室に連れ込まれたら、それこそ何時間離してもらえなくなるんだろう…… そして……どれほど愛されてしまうんだろう…… ぞくりと体を駆け抜ける甘い疼きに、私は喘ぐように息を吐く。 結局は、いつもナルトくんのペース。 でも知ってるの、優しくて甘くてとろけるような……そんな心地にしてくれる。 そして何より無理強いはしない。 こうは言っていても、私が本気で嫌がれば止めてくれる……だから…… 無言でナルトくんの首筋に腕を回す。 これが私の精一杯。 「ヒナタ、可愛い……」 甘い声で囁かれ、目を閉じると抱き上げられて寝室へ運ばれる浮遊感だけを感じる 逞しい体躯のナルトくんの熱と、熱い視線。 私を欲してくれる、そんな彼の心が嬉しくて……。 ふわりとベッドの上に降ろされて、それから圧し掛かる心地よい重みを感じつつ、目を開き視線を絡めると、互いに笑い合った。 こういうことは恥かしいけど……でも、愛しい言葉だけでは足りないとき、伝えきれないとき、必死に求める、相手を渇望する心のままに動くのもいい。 それを教えてくれたのはナルトくんで…… 愛しているという言葉だけでは伝えきれない、この心にある甘い熱。 目を閉じ重ねた唇だけでは満足できない、そんな激情があるのだと知ったのはもう大分前だけど…… だけど、思う。 ナルトくんが私を選んでくれて良かったと、こうして自分に触れてくれるのが彼で本当に良かったと。 もうそれを伝えるには、言葉にならない声を出し始めた己の唇では無理だけれど…… 唇に乗せて彼に伝えたくて、いつもはしないけど、私は体を起こしてナルトくんの首筋に抱きつき唇を寄せて、ナルトくんがいつも私にするように皮膚を吸い上げた。 「ん……ヒナ……タ?」 驚いた顔のナルトくんを見つめて、私は微笑む。 「あいして……るっ……」 言葉だけでは足りなくて、彼の首筋についた証に満足。 自分のものなんだって印……こんな気持ちなんだね。 これからナルトくんが、私に印をつけるの拒めないような気がする…… 全てが愛しくて、全てが熱くて、全てが甘い。 互いの呼吸も、互いの熱も、逃さぬようにお互いに刻み付ける。 そんな暑く熱い昼の出来事─── (互いの熱はもっと熱くて……) |