恋色ネイル






 今日の任務の帰りに、手に入れた新作のネイル。

 人気のピンクが丁度三本あったから、新作おだんごのお礼にヒナタとサクラにプレゼントしようと買い占めた。

 サクラと合流して、ヒナタが鍛錬している演習場へ行ってみると、丁度休憩していたみたいで、真新しく作られた屋根のある広めのテーブルつき対面ベンチに座ってドリンクを飲んでいる。

 グッドタイミングっ!

「ヒナターっ!」

 声をかけると、すぐに反応してヒナタが私たちの方を見てから手を振ってくれる。

 最近あの子は綺麗になった。

 まぁ、それがナルトのおかげっていうのも凄い話。

 大戦の英雄と名高いアイツは、大戦後、妙にヒナタと一緒に居る事が多くなった。

 しかも、ハタから見て、アレは付き合ってんじゃないの?って言うほどのラブラブっぷり。

 何より驚くのは、ナルトは無自覚。

 そして、ヒナタは天然でわかっていない。

 なんなのよ、あの二人……とっととくっつけばいいのに。

 どっからどー見ても、相思相愛。

 やってらんないわよね。

 そういうサクラも、サスケくんと付き合い出したらしく、すっごく綺麗になったと思う。

 長年の想いが通じたんだもんね……私は結局諦めちゃったけど……。

 アスマに諦めるなよって言われていたのに……でもさ、一生懸命のサクラを見ていたら……ね。

 そんなことを考えながら、ヒナタの横に並んで座る。

 私を挟んで、右にヒナタ、左にサクラ。

 それぞれの前に、ネイルを置いて「この前のお礼」って言うと、二人は驚いたようだったけど、喜んで受け取ってくれた。

「へぇ……これって、人気商品じゃない、よく手にいれたわね」

「さすがサクラ、よく知ってるわねー」

「だって、手に入れようと頑張ってたんだものっ」

「私もたまたま運良く見つけただけよ」

 ネイルの小瓶を見ながら、物珍しそうな顔をしていたヒナタは、その色合いが気に入ったのか、ほわんと柔らかい笑みを浮かべてくれる。

 この子のこーいう笑みが好きなのよね。

「綺麗だね」

「そうでしょ?爪に塗ると、もっと栄えるのよー」

「そ、そうなんだ?……わ、私こういうの……したことないから……」

 少し照れ笑いを浮かべそういうヒナタ。

 ヒナタ色白いから、こういう色すごく似合うのに……勿体無い。

「お?ヒナタ!……あ、サクラちゃんといのもいる」

 遠くから元気のいい声がかかる……アンタ、ヒナタだけは見つけるの早いのね。

「な、ナルトくん……」

 ナルトと、サスケくんと、サイくん……新旧七班の男たちのお出ましだわ。

「なにやってんだ?……ん?ソレなんだってばよ」

 さりげなく、でも慣れたようにヒナタの前へ座り、手にしていた小瓶を突付く。

 本当にナチュラルにヒナタに接触するようになったわね、アンタ。

 その変化に気づいてないっていうのが、アンタたる所以かもしんないけど……

 ヒナタも慣れてるのね、前みたいに真っ赤になることもなくなったし、柔らかい笑みを浮かべたまま。

 いいわよねー、こんないい笑顔してもらっちゃってさ。

「ネイル……か」

 さすがサスケくん、サクラと付き合ってるだけあって、多少知識あるみたい。

 サクラが使ってるの、見たことはあるってカンジ。

 どんだけ一緒にいるの?サスケくんとサクラも……

「女性の爪に塗るものですね」

 サイくんがそういうと、ニコニコ笑う。

 いつもの胡散臭い顔じゃないのは、やっぱり絵を描く人だからなのか、色に対しての興味が引かれたのかもしれない。

 いいこと思いついちゃったー♪

「そうだ、サイくんって筆とか使うから上手そうよね、塗ってもらっても大丈夫かしら」

「はい、じゃぁ、こっちで……」

 三人くっついて座っていた私は、今度はサクラの反対側に間を空けて座ると、その正面にサイくんが座って手を取った。

 ネイルの小瓶を開き、筆を滑らかに爪の上で走らせる。

 さすが……器用だし丁寧だし上手。

 さながら、私の爪はキャンパス代わり。

 色むらなく、綺麗な色彩を待とう指の爪を見て、私は満足げに笑ってみせる。

「さっすがねー、綺麗だわ」

「へー、器用なもんだな、サイ」

 私の指先を見て、ナルトが感心した声を上げる。

「まぁ、ナルトみたいな不器用さんには無理だろうけどね」

「ムッ……なんだとっ」

「サスケくんも、何気に不器用だから、無理かな」

「……テメー」

 一気に殺気立つ二人。

 まぁ、器用かって聞かれたら、すっごい不器用そうなナルトと、ちょっと不器用そうなサスケくん。

 ネイル塗るの慣れている男っていうのもどうかって思うけど……。

 サイくんの場合は、絵で筆の扱いに慣れているだけなのに、妙に対抗心燃やしてどうすんのよ。

「よーし!サスケ勝負だってばよ!」

「フン、あとでほえ面かくなよ、ウスラトンカチ」

 何でか二人の対決に発展するこの状況……まぁ、面白いからいっか。

 アカデミーの時のノリよね、コレ。

「……サクラ、手を貸せ」

「ヒナタ!手ェ出せ」

 それぞれ正面にいる人物に、ネイルと手を出せって……すっごく怖い顔して言うもんだから、サクラは引きつり、ヒナタは怯えている。

 暫くにらみ合っていた、サスケくんとナルトは、ネイルの小瓶を開けて筆を掴み、サスケくんはサクラの、ナルトはヒナタの手を強引に引っ張った。

「あ、除光液もあるから」

 私はポーチから除光液とコットンを出して置くと、二人がキョトンとするので、軽く説明する。

「ソレ、普通じゃとれないの。この除光液を浸したコットンでふき取ると、綺麗にとれるから、何度でもできるわよー」

「へー、そんなもんなんだな」

「なるほどな」

 ナルトとサスケくんがそう返事をしたのを確認して、傍観を決め込む。

 だって、下手に声かけたら何だかとばっちりきそうじゃない?

 助けを求めるような顔をしているサクラとヒナタを見ないようにしつつ、私は頬杖をついて、男二人が真剣にネイルを塗る姿を見つめる。

 やっぱり最初は綺麗に塗れるワケないのよねー。

 女の苦労、甘く見てもらっちゃ困るわ。

「結構難しいな」

「へっ、もう降参かよ、サスケ」

「バカ言うな、ドベ」

「ドベっていうのヤメロってばよ」

「フン、ドベはドベだろうが」

 軽口を叩きながらも、目は真剣そのもの、そして極度の緊張から筆先は震えている。

 中々見れるもんじゃないわよね、大戦の英雄と最後のうちは一族のこんな姿……。

「うあっ、つけすぎたってばよ」

「……チッ」

 二人してコットンに除光液を浸し、丁寧にふき取る。

 そして、また塗り……ふき取り……。

 アンタたち……飽きないわね……。

「本当に不器用ですね」

「うっせー!黙ってろってばよっ!」

「黙れ」

 サイくん、いらないこと言わないの。

 あの二人、物凄く真剣勝負してるつもりだから……。

 ハタから見たら、物凄くしょーもない勝負してるんだけど……ね。

「だぁっ!ヒナタ動くなってば」

「で、でも……あ……あの……」

 ああ、極度の緊張で、ヒナタの手が震え始めちゃった……しょうがないわよね、大好きな人に手をずっと握られて、真剣な瞳で見つめられていたら……。

 失神しなくなっただけでも、大きな進歩だと思うのにねー。

「何だ、協力してもらえねぇのか。見ろ、サクラは大人しいじゃねぇか」

「ムッ……ヒナタは別に非協力的なワケじゃねーってば」

「フン、どーだかな」

 ギリギリと歯を食いしばるナルトに、不適な笑みを浮かべるサスケくん。

 そういえば、この二人……昔から、こういう勝負してはこんなやり取りしてたわよね。

 懐かしいわー。

「だいたい、サクラちゃんが大人しいっておかしいってばよ!ヒナタのほうが大人しいに決まって……ぐはっ」

 あ、ナルトが吹っ飛んだ。

 でも、吹っ飛ぶ前に、ちゃんと巻き込まれないよう、ヒナタの手を離すのは流石ね。

 殴られなれてるヤツってのは、こういう気遣い出きるものかしら。

「黙って塗ってなさいよね……ナルト」

「サクラ、お前も動くな」

「は、はいっ」

 サクラの一撃を食らって撃沈したナルトを尻目に、サスケくんはクールにサクラを止める。

 ナルトを殴ったことじゃなくて、動いた事を咎めるって……まぁ、いつもの光景かな。

「な、ナルトくん……だ、大丈夫?」

 腰を浮かせてナルトを心配し、駆け寄ろうとするヒナタの目の前で、ムクリと体を起こしたナルトは、何か思いついたのか、声を張り上げた。

「……あーっ!ったく、ヒナタが動かなきゃいいんだろっ!?こーすりゃいいじゃんっ」

 徐に立ち上がったナルトは、ヒナタの後ろに回って……

 ちょ、ちょっと、アンタなにやってんのよっ!

 後ろから抱きしめて自分の体をつかって押さえつけるように動きを封じ、真っ赤になってオロオロしているヒナタの手を取ると、その手をテーブルに押し付ける。

「な、ナルトくんっ!?」

「こーすりゃ、いくらヒナタでも動けねーだろ」

 勝ち誇ったような笑みをして、ヒナタを見下ろし、ヒナタは腕の中でふるふる震えながら、困惑した顔のまま後方のナルトを見上げた。

「そ、それは……そ、そうだけどっ、で、でもっ」

 互いの顔の近さに、頬を真っ赤に染めて今にも泣き出しそうになりながら、それでも必死に解放してもらおうと声を出す。

 うん、やっぱり変わったわよね、ヒナタ。

 今までのアンタだったら、気絶してるところでしょ?

「あー、もー、黙ってろ。サスケにぜってー勝つんだ!」

 あー、聞いてないし、わかってないし。

 ヒナタを完全に包み込むように押さえつけている格好……ナルト、アンタまたデカくなったんじゃない?

 凄くヒナタが小さく見えるわ。

「え、でも……あ、あの……な……ナルトくん……」

「ヒナタ」

「は、はいっ」

 低くなったナルトの声に、ヒナタは反応して、ビクリと肩を震わせる。

 ジッと見下ろされ、完全に意識を持っていかれているんじゃない?

「黙ってろ」

「は……はいぃ……」

 観念したように、ナルトの腕の中で大人しくなるヒナタ。

 ナルトはヒナタの頭に頬をくっつけたような状態で、ジーッと指先の作業に没頭している。

 体を捻ったような状態で真っ赤になって耐えているのは……あー、あの体勢だと、ナルトの息が耳にかかるんでしょ?

 ある意味拷問よね。

 赤い顔をして何かに耐えるようなヒナタの艶姿に、思わずみんなが息を呑む。

 そりゃそうよ……あんな暴挙に出るなんて、誰が思うのかしら。

 涙目で、私に助けを求められても無理だからね、ヒナタ。

 アンタの旦那に言いなさいよ。

 てか、ソレで、本当に付き合ってないの?アンタたちっ!

 サスケくんがナルトの暴挙に呆気にとられつつも、頬を染め「ウスラトンカチ」と呟いたあと、サクラを見て慌てて視線を逸らす。

 何かサスケくん、可愛い……。

 サクラはサクラで、一瞬羨ましそうに二人を見たけど、サスケくんがそんなことしないってわかってるんだと思う。

 少し頬を赤らめただけで、至って冷静。

「ん……な、ナルトく……んっ」

「どうした?」

「あ、あの……み、耳に……」

「ん?……ああ、髪が邪魔か?かけてやるってばよ」

「え、違っ……」

 すいっと邪魔にならないように耳に横髪をかけてやり、満足げに笑う。

「これでいいだろ」

「う、うん……ありがとう……じゃ、なくってっ」

「だから、黙ってろって……あとでちゃんと聞いてやるから」

 案外優しい声で良い含めるように目を細めて笑い言うと、ヒナタはこくりと素直に頷いてしまう。

「う、うん、お願いしま……っ!」

 で も ね ?

 そうよねー

 髪でなんとかガードしていた部分があるのに、耳に直接息かかるようになっちゃったわよねー。

 ナルト……アイツわざとやってんじゃないの?

 ヒナタはもう息も絶え絶えで、涙で潤んだ瞳をしながら、何とかナルトの吐息から耳を守ろうと必死。

 右手で耳を押さえようにも、ナルトに邪魔だと押さえ込まれる始末。

 本当に動けないように体の各部分が絡んでる状態って……目の毒だわ。

「よし、塗れた」

 サスケくんがいち早く塗り終え、ナルトも塗り終えたみたいで、漸く一息ついたみたい。

 お疲れ様……特にヒナタ。

 息も絶え絶えで、涙目のヒナタに漸く気づいたらしいナルトは、焦ったように腕の中のヒナタに声をかけるんだけど……

「ど、どうしたんだ?ヒナタ、何か涙目だけど……あー、痛かったか?ごめんな」

 違う、根本的に違う。

 アンタか耳に息吹きかけたような状態だったから、カンジちゃったんでしょうが。

 好きな男の腕の中で、密着した状態で、耳って……アンタ、それ拷問よ?

「う……ううん……い、いいの……も、もう……大丈夫……だから……」

 健気に笑って見せるヒナタ……アンタ、本当に出来た子ね。

「すまねーってばよ」

 切なそうな目をして謝るナルトに、微笑を浮かべ首をふるヒナタ。

 やっぱ、アンタたちが付き合ってないっての認めない。

 ていうか、信じらんない!

 普通じゃないわっ!異常よっ!

 ……でも、付き合ってて、アレ……出きる?

 若い男女があんな密着してたら……その気になるんじゃないかしら。

 てことは……やっぱり付き合ってないってことよね。

 男女の仲じゃないってワケよね……。

「サクラ、乾くまで動くんじゃねぇぞ」

「う、うん……さ、サスケくん……手……握ってなくても……大丈夫よ?」

「っ!べ、別に良いだろ」

 何?私、何かすっごーく寂しいわ……。

 何よ、このイチャイチャバカップル二組!

 一組付き合ってないけど、付き合ってるも同じでしょっ!

「速乾性だから、すぐ乾くんじゃないかな」

 今まで黙って見ていたサイくんがそう言うと、二人の手元を見つめる。

「サスケくんのほうが、まだ綺麗に塗れてるね」

「ふん、当然だな」

「なんだってーっ!!」

「オレの勝ちだ」

「ぬぐぐぐぐーーっ」

 勝ち誇るサスケくんに、すっごく悔しがってるナルト。

 まぁ、決着ついて良かったわ。

 そろそろお昼だし、丁度良かったかも。

 暇つぶしには、なったかもしれないわね。

「ヒナタ!」

「は、はいっ」

 急に声を出したナルトに、皆の視線が向けられる。

 って、アンタまだヒナタ抱っこしてんの?

 そろそろ解放してあげなさいよ……

 ……ん?そういえば、何か慣れたようなカンジしない?

 もしかして、ナルト……アンタ、ヒナタを抱きしめるの、コレがはじめてじゃないワケ?

 て、ソレならソレで問題アリよ!?

 でも、誰でも抱きしめているってカンジじゃないわよね……アイツ、スキンシップ多いけど、それなりにラインがあるのは知ってるもの。

 ヒナタに対するラインって……もしかして、ない……とか?

 ソレ、普通、彼女にするもんじゃない?

 そんなことを考えている私の目の前で、ナルトはヒナタの手をぎゅぅっと握って、真剣な目でヒナタを見つめる。

「サスケより上手になりてーから、付き合ってくれ」

「え……?」

 どこかの告白みたいに聞こえるけど……そういう意味合い含んでないのは前のセリフでわかる。

 アンタどこまでサスケくんに対抗意識燃やすワケよ。

「ヒナタの手、貸してくれ」

「……えっと……え?」

「塗る練習してーんだって」

「あ、う、うん、それくらいなら……」

 そこで頷いちゃうヒナタは、本当に良い子。

 大好きな人の助けになりたいって一心よね。

「よし、んじゃーネイル買いに行くぞっ」

「へ?あ、わ、私、家に一度帰って、サイフ……」

「オレが出す」

「え……で、でもっ」

「オレが練習すんだから、オレが出すの当たり前だろ?」

「そ、そんな……」

「色は何がいいかなー……そうだ、オレンジにしようぜ!」

 一瞬考え、いい考えが浮かんだとばかりに、明るい顔をして笑うナルトの無邪気さに騙されて、次の言葉を聞きそびれるところだった……。

「オレの色だし」

「……え、あ……う、うん……」

 もう何も言えない……アンタ、それ口説いてるでしょ?

 口説いてるわよね!?

 なに?オレの色?

 アンタの色を、ヒナタの指先につけるって?

 オレの色をオレが塗ってやるって?

 オレのもの宣言っ!?

「ほら、行くぞっ!」

 立ち上がり、ヒナタの手をぐいぐい引っ張るナルトに、引きずられるような格好のヒナタ。

 それでも私のプレゼントのネイルと荷物はちゃんと回収した辺り、ナルトに引きずられなれてるのね。

「みんな、またなー、サスケ!次は負けねーからなっ!!」

「い、いのちゃん、ネイルありがとうっ!さ、サクラちゃん、ご、ごめんねっ!サイくん、サスケくん、ま、またねっ」

 苦笑しつつ手を振ると、ヒナタも控えめに手を振り返してくれた。

 そんなヒナタに、ナルトはパッと顔を近づけ笑う。

 何気なく手を繋いでるのは、私の気のせいじゃないわよねー。

「あ、ついでに飯も食おうぜ」

「だ、だから、私、サイフ……」

「奢ってやるから」

「で、でもっ」

 悪いからって言いながら遠慮しようとしているヒナタに、ナルトは申し訳なさそうな顔をする。

「さっき痛い思いさせちまったし……ごめんな?その侘びも兼ねて、奢らせてくれってばよ」

「な……ナルトくん……気にしてない……のに……」

「オレが気にすんのっ」

 困ったような顔をして目を細めるヒナタに、ナルトは極上の笑みを浮かべて優しく甘い声でヒナタに囁きかかけるように言う。

「それにヒナタと一緒だと昼飯も美味いしさ」

「そ、そうか……な」

「おう」

「う、嬉しい……」

 はにかむような笑みを浮かべるヒナタに、ナルトは本当に嬉しそうに笑う。

「へへ、ヒナタが笑ってくれてると、オレも嬉しい」

「あ、ありがとう……」

「ああ、オレもありがとな」

 ゆっくり遠ざかる後姿と共に聞こえてくるバカップルみたいな会話……

 ねー、もー、本当に勘弁してよねー。

「ねぇ、いの」

「なに、サクラ」

 不意に私に声をかけてくるサクラ。

 まぁ、だいたい言いたいことわかるけどね……。

「サスケくんは勝負に勝ったけど」

「ええ」

「私はヒナタとの勝負に負けた気がするわ」

「そうね、否定しないわ」

 大きな溜息混じりにそう言うと、私とサクラはガックリと肩を落とす。

 あの二人が本当に付き合いだしたら、とんでもないバカップル誕生じゃない?

 今でもアレを素でやってんでしょ?

 でも、まー……

「幸せそうだから、許せちゃう私たちも私たちよね」

「そうね」

 サクラと顔を見合わせ笑うと、サスケくんとサイくんも苦笑を浮かべる。

 そりゃそうよね、そう思ってなかったら、あの二人のバカップルぶりを誰かが注意するところじゃない?

 それなのに、何でか許容しちゃうって凄いことなんだと思う。

「ボクたちも、そろそろお昼行きますか」

 サイくんが立ち上がり、みんなを促す。

 彼も、こういうところ変わったと思う。

 だから、ちょっと甘えてみよう……どういう反応を返してくれるか気になるし。

「勿論、私の分はアンタの奢りね」

 そう私が言った瞬間、サイくんは驚いた顔をしてから、口元を綻ばせ自然な笑みを浮かべた。

 へぇー、普通に笑うといい男じゃないの。

「しょうがないですね」

「てことは、オレはサクラの分を払えばいいんだろ」

「さ、サスケくん……」

 頬を染めるサクラから視線を外して、サスケくんはもう見えなくなったナルトとヒナタが行ってしまった方を見て笑う。

「ウスラトンカチがすることマネるみてぇだが、女に払わせるワケにもいかねーだろ」

「意外と古風だよね、サスケくん」

「お前もな」

 サイくんとサスケくんの二人がそう軽口を叩きながら、私たちを促し歩いていく。

 昼食が一楽だと、あの二人にまたばったり会いそうだけどね……。

 綺麗に塗られたネイルの色は、とっても可愛いピンク。

 きっとこの気持ちと同じ色。

 アンタたちのもたらす色。

 本当に、さっさとくっついて、私たちを安心させなさいよね!

 既に見えない二人に向かって、私は心の中で大きな声を上げたのだった。




誰よりも不幸だったアンタたちだから


誰よりも幸せになりなさい






(指先を彩るアナタの色)












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