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遊戯王

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今日は二月十四日、つまりバレンタイン。この日になると男女共に騒がしくなる。昨日、璃緒は夜遅くまでチョコのラッピングをしていた。璃緒曰く、チョコが美味しくても不味くても見た目とラッピングで全てが決まる、だそうだ。そして睡眠時間を削った結果、綺麗にラッピングされているビニールの小袋が紙袋をぶら下げて登校することができた。
校門前で璃緒が友達を見つけ、チョコを渡すために別れた。俺は一人で門を過ぎると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。

「おはよう陵牙」

なまえは小走りで俺に近寄り、手に持っている袋から小さな袋を取り出す。

「はい、ハッピーバレンタイン！」
「ああ…。ありがとう」
「よかった。一番最初に渡せて」

可愛くチョコの形整えれたし、ラッピングも綺麗にできたんだよ、となまえは自信満々な顔で言った。俺は小袋を受け取って鞄に閉まう。返しに何を渡そう、真っ先にそんなことが過る。
なまえの雑談を聞きながら歩いていると、いつの間にか下駄箱に着いていた。下駄箱を開けると、そこには綺麗にラッピングされたピンク色の箱が靴の前に置いてあった。

「チッ」

俺は箱をどかし、靴だけを取り出して下駄箱を閉じようと手にかける。

「どうしたの凌牙？あ、チョコ！良かったじゃん」

閉じるより先になまえが下駄箱の中を覗き、箱を見る。俺はため息を吐くと、なまえをどかして下駄箱を閉じた。

「いらねーよ」
「えっ、なんでなんで！？」
「なんでってお前…」

俺はなまえと付き合っている。だからなまえ以外のチョコは受け取らないと決めていた。璃緒もなまえと付き合ってからは渡さなくなった。これはなまえや璃緒に強請されたとかではなく、俺の意思だ。

「駄目だよ！」

しかし、その意思に反してなまえはあのチョコを受けとれと言う。

「チョコ置いた子が可愛そうでしょ！ちゃんと食べなくちゃ！」
「お前は嫌じゃねえのかよ？」
「え？」
「俺がなまえ以外から受けとるのとか…」
「え、嫌じゃないよ？」

きょとんとした顔でなまえは答えた。あまりにも即答に答えたものだから、俺は顔を引き攣らせた。

「例え陵牙が百人のヒトから私のチョコより美味しいチョコを貰っても、凌牙の中で一番好きなヒトが私だったら…私はそれでいい」
「…そうかよ」

朝から歯が浮くような恥ずかしい言葉を言うなまえに折れた。
下駄箱から箱を取り出す。なまえはニコニコ笑っていた。…なんか気に入らねぇ。別に他の女子からのチョコを貰っていることに妬いてほしいとかガキみたいなことを思う自分にも、妬かないなまえにもイライラする。

「なあ、もしこれがきっかけで俺がソイツと付き合うことになったらどうする？」
「…」

俺がそんなことでなまえと別れるはずがない。だからこれはちょっとした意地悪だ。なまえの顔を窺った。

「やだなぁ。そんなことで陵牙が別れるわけ無いじゃん」

笑いながら答えた彼女の様子を見て、更にイライラした。

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