小説 | ナノ



遊戯王
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ふと目が覚めた。時計を見ると深夜の一時半くらいを差している。明日…いや、もう今日か。今日も学校があるから寝なくちゃいけないと分かっているが、目を閉じても眠れる感じがしない。どうして深夜に目を覚ますとこうなるんだろう。いっそのこと、この状態に名前でもつけてやろうか。なんて馬鹿なことを考えてたらお腹から大きな音が出た。

「(…腹へった)」

もう一度時計に目をやる。1時半過ぎ。立派な深夜だ。さてどうしよう。食欲を満たすためになにか食べるか否か。と言っても、この時間に夜食を食べると太る。別に体重を気にしているわけではないが、女として食べるのはどうかと思う。まあ、それよりもカイト兄さんにバレたら怒られる。だったら簡単だ。食べなければ良い。高カロリーを摂取した挙げ句怒られるなら、今寝て朝食べれば良い。さっさと寝てしまおう。そう思って布団を整え直した。



「そう簡単に欲望を制御出来れば、もっと世の中は平和だよねー」

冷蔵庫からスライスチーズを取り出し、食パンの上に乗せた。私は食欲に負けた。空腹に耐えられず布団から飛び出て、今台所に立っている。人間が人間の三大欲に勝てるはずがない。さてチーズだけじゃ寂しい。

「何かないかな?」

冷蔵庫を片っ端から開く。するとスライスされたハムを発見した。

「よし」

お前だ。私はそのハムを包丁で短冊切りしてチーズの上に乗っけ、ケチャップ、マヨネーズをかける。

「ああカロリーと言う名の罪が増えていく…」
「何しているの?」

肩が上に上がり、心臓が大きく鼓動がなった。恐る恐る声の持ち主の方を見る。

「ハ、ハルト…。なんで?」

そこには眠たそうな目を擦って立っているハルトがいた。なぜ?ハルトがなぜここに?時刻は深夜の1時半を過ぎ。ハルトが起きてる時間な訳がない。

「トイレで起きたんだ」
「ああ、なるほど」

ハルト一人でトイレに行けるようになったんだね。私は嬉しいよ。なんて心の中で感動の涙を流していると、ハルトが近づいてくる。

「あー待ってハル、」
「なまえこれは?」

停止の声も聞かず、ついにバレてしまった。しょうがない。こうなったらハルトには共犯者になってもらうしかない。いや、ハルトを巻き込むのは心が痛むけど。

「ハルトお腹空いていない?」



「どう美味しい?」
「うん、美味しい!」

私の隣にいるハルトはもう一度口に持っていって頬張る。私もそれを頬張り、口の中に味が広がっていく。

「んー、うまい」

スライスチーズとハム、ケチャップ、マヨネーズを食パンに乗っけたなまえちゃん特製なんちゃってピザトースト。ピザソースがあればもっとピザっぽくできたんだけどね。

「ハルト、皆に言わないでね。特にカイト兄さんには絶対内緒だよ」
「うん。僕誰にも言わない。なまえも言わないでね」
「あったり前でしょ〜」

カイト兄さんにこの事を知られると、どうなるのかハルトも想像ついている。ハルトがバレれば私も怒られるし、私がバレればハルトも怒られる。運命共同体なのだ。

「ごちそうさまでした」
「はーい」

私は証拠を残さないようにケチャップやマヨネーズを片し、包丁を洗うのは勿論、念のために部屋の窓を開けて匂いを逃がす。消耗したハムと食パンはどうしようもできない。まあ流石に一枚くらいバレないでしょう。

「なまえ」
「んー、なに?」
「また兄さんに内緒で食べようね!」

ハルトは悪戯っ子の様な笑顔で笑うと小指を出した。おお…何て言うことだ。お兄ちゃんっ子であるハルトがこんなことを言うなんて。

「うん。また食べよう」

私は、私の小指をハルトの小指と絡めてた。

「ゆーび切り弦間ん、嘘ついたらカイト兄さんに言ーっちゃう!」
「なっ、なんて恐ろしいことを言うんだハルトっ…!」


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