小説 | ナノ



アロマなあの子
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※ifストーリー
※あの子がハノイだったら


自分はハノイだと名乗る女がデュエルを仕掛けてきた。女に建物の中へと入っていく。

「この建物は特殊なプログラムが組んである。ログアウトは愚かお得意のデータストームや外部からの連絡は出来ない。私とデュエルよ!」

デュエルディスクを胸元に構えた女が声を張る。この女から何か情報を聞き出せるかもしれない考えた俺はデュエルを受けた。

「行くわよ!アロマガーデンの効果でライフを五百ポイント回復!そしてフィールドの植物族モンスターの攻撃力、守備力を五百ポイント上げる!ライフを回復したことによってジャスミンとローズマリーの効果発動!」

アロマージ…。なまえの姿が過る。確かなまえはアロマージデッキを使っていた気がする。しかし、今はそんなこと気にしている場合じゃない。女がターンエンドを宣告したことを確認してから、俺はデッキからカードを引いた。
長期戦のデュエルの末、俺は勝利すことができた。地面に跪く女の元へ近よる。

「さあ、お前が知っていること全て話せ」
「…悪いわねプレイメーカー」

女が蚊の鳴くような小さい声で呟くと、足元が…いや、建物全体が大きく揺らぐ。

「ひぇー!何だ何だ!?」
「これは…」
「この建物に組んだプログラムは私が負けると建物が崩れる仕組みなの。悪いけど貴方はここで終わりよ」
「ログアウトが出来ないのはお前も同じはずっ…!そんなことしたらお前だってただじゃすまないぞ!」
「そうね」

自暴自棄すぎる…!天井、壁、床のヒビが大きくなり、ついに崩れ始めた。もしリンクヴレインズ内で怪我を負えば現実にも影響される。いったいどうすれば…。
女の真上の天井にヒビが入り、崩れた。予想外の出来事だったのだろうか彼女はは目を見開いて固まっている。俺は彼女に手を伸ばした。

「…どうして助けたの?」
「勘違いするな。お前には聞きたいことが山ほどある」

女は疑問の目で俺を見つめた。天井から落ちてくる瓦礫を避けながら逃げ回る。だが、瓦礫に道を塞がれ道を憚れ、動ける範囲が限られていく。

「くそっ」
「どうするんだよプレイメーカー!」

脱出しようにも、女が建物に組んでいるプログラムを解除しない限り出ることができない。

「おい!!プレイメーカー上!!」

アイの叫び声に気づいて上を向くと、真上に瓦礫が迫っていた。

「(避けられない…!)」

本能的に死を悟った。この瓦礫に潰されたら現実でかなりのダメージを負うはずだ。迫ってくる瓦礫の落下速度が遅く感じる。

「遊作っ!!」

後ろから体に強い衝撃を受け、突き飛ばされた。倒れ行く中、後方を振り向くと、俺が立っていた所に女がいた。

「なっ!」

落下した瓦礫の衝撃が皮膚や心臓に響いた。女の姿は見えない。

「おいアイツ…。い、今お前の名前…」

嫌な汗が滲み出る。プレイメーカーが遊作と知っている女は一人しかいない。

「(なまえ…!)」

その後、彼女が強制ログアウトされたことによってプログラムが解除されてた。建物のから脱出することができ、草薙さんもあの出来事をモニターから見ていたようで、説明しなくても理解してくれて、草薙さんの車でなまえの家へ向かってくれた。

「なまえっ!」

不用心にも鍵は空いていて、家に入ることができた。部屋を手当たり次第覗いてみたが、なまえの姿は見当たらない。胸がざわつく。

「なまえが…ハノイだったなんて…」

俺も草薙さんも黙って飲み込んでいた言葉をアイが吐き出した。アイの蚊の鳴くような小さい声が静かなこの家の中では十分大きく聞こえた。



「なまえ…」

静かに眠っているなまえの前髪を指先で優しく流す。今回の計画に彼女自ら志願した。

「了見。私、頑張るから」

私がプレイメーカーを…いや、藤木遊作を家に招いてしまったせいで彼はロスト事件に巻き込まれた。その罪悪感で彼に助言を言ってしまい、事件後は藤木遊作と同い年のなまえに彼を影からでもいいから支えてほしいと側に着かせた。自分勝手で我が儘な願いを彼女は嫌な顔を一つしないで聞き入れてくれた。彼女はさっきリンクヴレインズ内で致命傷を負った。しばらくは目を覚まさないだろう。
だが、奴等に彼女と私の関係が明かされるのは時間の問題。念のためにここに運んだが、彼女が目を覚ましたらどうするんだろうか。プレイメーカーの元に戻るのか、それともこのまま私の元にいてくれるのだろうか。なまえを藤木遊作の側に置いたのは私の意思だ。しかし、戻ってきてほしいと我が儘を言ったら彼女は微笑んでくれるだろうか。私はなまえの頬を優しく撫でた。


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