小説 | ナノ



アロマなあの子
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「はぁ…」

みょうじさんはソーセージを焼きながら深いため息を吐いた。その顔は凹んでいるような、悩んでいるように見える。

「みょうじさんまたため息してる」
「これで五回目だな」
「数えてたの?」

ここに着いてからのため息の数を数えていた不霊夢に少し引く。みょうじさんはため息を学校でもしていた。

「遊作は何か知っている?」
「ああ…。昨日デュエルで負けたからだろ」

遊作はパットから目を離さず、さらっと原因を言って見せた。僕はその原因に驚いて声をあげる。

「あのみょうじさんが!?」
「相手誰だったんだ?」

不霊夢が遊作に問いかける。遊作はパットで調べものをすると、出てきた記事を僕と不霊夢に渡して見せた。アイが「俺も俺も」と言いながら割り込んでくる。

「名前は覚えてない。だが、デッキがシモッチだったらしい」
「完全メタじゃん!」

アイが頭を抱えて叫ぶ。シモッチデッキ。つまり相手の回復効果をダメージに変更するバーンデッキ。対するみょうじさんのデッキは回復しながら戦う。その上、相手よりライフが上回ってないとほとんどの効果は使えない。なまえさんの方を見ると、ソーセージを焦がした事に気づいてさらにため息を吐いていた。

「みょうじさん!」

草薙さんが戻ってきて交代したみょうじさんに声をかけた。

「えーっと、僕とデュエルしない?」
「穂村くんと?」



「転生リンク召喚したヒートライオの効果でベルガモットをJジャガーの攻撃力分ダウン。ヒートライオでベルガモットを攻撃!続けてファルコでトドメ」
「やっぱり穂村くんは強いわね。リンクヴレインズでのデュエルを見ていたから警戒すべきカードは分かってたの負けちゃった」

彼女は手に持っているカードをテーブルに置いて、困った顔をして頬笑む。

「そんなこと言ったら僕だって…」

配信されたネームのデュエルを何度も見た。ネームのデッキで気をつけるべきカード、戦術、罠の使うタイミング。ネームはGO鬼塚やブルーエンジェル、プレイメーカーより出てきたのが後だけど、似た輝きを放っている。彼女には一生懸命で楽しそうにデュエルを続けてほしい。そう思ってデュエルを誘ったんだけど、勝敗は僕の勝ち。

「全然ダメね、私…」

これじゃあ、凹んでいる彼女に追い打ちをしてるのと変わらない。

「みょうじさ…」
「穂村くん!今のデュエルで私のダメだったところ全部言ってくれない?プレイングに偏りがあるとか読みが甘いとか」

雲がかかっていたような暗い表情がパッと明るくなった。みょうじさんの真っ直ぐな眼差しに僕が映る。良かった。いつものみょうじさんだ。

「ありがとう穂村くん。」

さっきのデュエルで気づいたところをみょうじさんに伝えた。彼女は僕の途切れ途切れの説明を相づちを打ちながら聞いてくれた。

「みょうじさんはどうしてそこまで強くなろうとするの?」

話しているときずっと思っていた。みょうじは十分強い。その結果がネームと言う存在だ。

「私ね、今度こそ遊作や草薙さんの助けになりたいの。だから今より最も最も強くなりたい」

答えたみょうじさんの表情はどこか寂しげさがある様に見えた。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「穂村くん。今度はこのカードをいれて、キュアバーン型にしようと思って、あと、魔法と罠の除去カードを増やそうとも思ってるんだけど…」

「最近なまえお前に相談に来なくなったな」
「そうだな」
「尊になまえ取られて嫉妬してるんじゃないの〜?」
「別に」


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