小説 | ナノ



遊戯王
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※『好奇心は鮫と出会う』の続き


屋上で転がっていると、扉が開く音がした。誰かが来たんだろうな。誰だか知らない足音を無視したまま再び目を閉じた。視界が黒に変わり、聴覚が少し敏感になる。足音は屋上を歩き回ると、立ち止まったのだろうか聞こえなくなる。聞こえなくなると思ったら、また歩き出して近づいてくる。そして鉄梯子を昇る時に聞こえる音が大きくなる。閉じてた目をゆっくり開けた。

「神代センパイ!やっと見つけました!」
「お前昨日のっ!」
「覚えててくれたんですか!」

足音の主の顔を見て、ガバッと起き上がり驚く。昨日路地裏でデュエルをして、突然現れたカイトに確かなまえと呼ばれていた女。

「テメェ、なぜここに」
「そんな警戒しないで下さいよ。私ここの生徒ですよ?学校に来るのは当たり前じゃないですか。」

なまえの顔から下を見ると確かに制服着てる。色は赤。つまり一年。

「それより札付きの神代センパイの方がちゃんと学校に来ていたのが驚きです。二年生のクラス全部に聞いてクラスが分かっても誰も見ていないって言うんですよ!いやー、授業と授業の合間の短い時間だけじゃ探せなくて、お昼早く食べ終わって来てあげたんですよ。本当に大変でした」
「何の用だよ」

大方予想はつく。コイツとはナンバーズをかけてデュエルをした。だけど、決着がつかないままそのデュエルは中断された。つまり…

「デュエルして下さい!」
「ハッ、やはりな。ナンバーズが目的か」
「やだなー。ナンバーズなんていらないですよ。」
「あ?」

なまえはヘラヘラした顔で笑った。

「あ、やっぱりナンバーズ持ってないとデュエルしたくないですか?」
「だってお前昨日っ…」
「あー確かに私のナンバーズはあります。でも持ち出し禁止で、ナンバーズ狩りの時だけこっそり持ち出していたんです!」

淡々と自分のナンバーズ狩りの事情を話す。
カイトとは実の兄弟ではない事、ナンバーズ狩りは反対されていた事。
全部聞き終わり、デカイため息をはく。

「…何なんだよその話し方」
「話し方?ああ、だって神代センパイ年上じゃないですか。年上の人には敬語使うのは社会の常識ですよ」

更にため息が出そうになった。
真面目か。

「…床でもいいんだろ」
「してくれるんですか!?」
「一回だけだ」
「やったー!」

うるせぇったらありゃしない。


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