小説 | ナノ



アロマなあの子
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リンクヴレインズ内にあるトラップが作動した。上と前後左右から壁が迫って来て、逆三角形の形をした空間に閉じ込められた。

「ごめんなさい。私がちゃんと注意していれば…」
「気にするな。ネームのせいじゃない」

このエリアに侵入する前、草薙さんとすべてのトラップの配置を確認したつもりだったが、見落としていたのだろうか、調べた時に無かったトラップに引っかがった。どうにかここから出られないだろうか。試しに目の前の壁を二回殴ってみた。

「びくともしないな」

デュエルディスクで草薙さんと連絡を取ろうとするが、連絡は愚か、ログアウトすら出来ない。きっとこの中に妨害する特殊な機能があるのだろう。

「ねえプレイメーカー。その体勢辛くない?」
「いや、問題ない」

この空間は上に一枚、前後左右に三枚の板に囲まれて出来ている。その為、しゃがんでいるネームを踏まないように俺が覆い被さっている不安定な姿勢となっている。

「そう。少し体勢を変えて良いかしら?」
「ああ」

ネームが壁に両手を付けて、ゆっくり立ち上がろうと力を込めると、手をすべらした。

「きゃ!」
「ネーム!」

壁にぶつかりそうになったネームを片腕で支えて胸元で受け止めた。

「ご、ごめんなさい…」
「いや…」


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