小説 | ナノ



遊戯王
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「凌牙って私の事邪見に扱うけど、なんだかんだかまってくれるし、面倒見てくれるよねー」
「チッ、」

椅子に座ってデッキ調整をする俺の隣に座ったと思えば、なまえは意味不明な事を言い始めた。なまえは頬杖をついて反対の手で俺が手に持っているカードを一枚取り上げた。

「今の舌打ちも凌牙の愛情表現でしょ?分かってる分かってる」
「うぜぇぜ」

なまえからカードを取り返してデッキ調整に戻る。なまえは俺を見つけると用もないのにいつも絡んでくる。鬱陶しい。なまえは勝ち誇った様な顔をして、喋るのを止めない。

「またまた〜。本当は私の事を好きなんでしょ?」
「んなわけねぇだろ」
「でも私は凌牙の事愛してるけどね」

手に持っていたカードが滑り落ちた。なまえが俺の事を愛してる?驚きのあまり言葉をなくした。

「…ぷっ、あはははっ!何その顔、驚いた?」

なまえは「冗談だよー」と、悪戯が成功した子供のように笑った。それはそれで別の意味で言葉をなくした。なんだよそれ、ふざけんな。





「遊作、ほんっとありがとー!好き!愛してる結婚しよ!」

後で俺の両肩を前後に揺さぶり、適当な言葉を並べるなまえ。
なまえは嬉しい事があると、誰だろうとすぐ今のように好きなど愛してるなどの言葉を使う。勿論本気ではない。全部冗談だ。

「ああ、そうだな。俺も愛してるよ」

だから俺も適当に返事をした。
すると、体の揺れがピタリと止まり、なまえの声が聞こえなくなった。突然静寂となったこの場に異変を感じ、後ろにいるなまえを見て心臓が大きく鼓動を打った。

「…あはは。困ったな」

そこには、いつもの無邪気な笑顔をしているなまえとは思えないほど顔を真っ赤にして俺を見ていた。
なまえは、はっとして慌てて手で顔を隠し、そっぽ向いた。よくよく考えれば俺はとんでもない事を言ってしまったのかもしれない。

「どーするんだ遊作」
「やだ〜、遊作ちゃん大た〜ん。こんな時人間は責任とらなくちゃいけないんだろ?」
「違うの二人とも!その、突然でびっくりしちゃって…。何て言うか…。あの。わ、忘れて…」

仕入れをしていた草薙さんからヤジを入れられ、AIからは煽られる。なまえは赤い顔を手で隠し、言葉を詰まらせながら誤魔化し続けた。
なんだ、その顔は。顔を赤くしたいのはこっちの方だ。


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