小説 | ナノ



おそ松さん
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「はいなまえ分のチョコ!」
「ん…ありがとう。じゃ、私からも」


2月14日、女子が男子にチョコあげるバレンタインだ。
渡すチョコには種類があって義理チョコ、友チョコ、本命チョコの三種類に別れてる。今貰ったのは友チョコ。


「聞いてなまえ、梅原君仕事終わったら待っててくれるって!勇気出して良かったー!」
「おー、おめでとう」
「って、なまえ反応薄くない!?本当に緊張して心臓バクバク鳴ったんだよー!」
「好きだねー…まぁ、頑張ってね」
「なまえはいないの?好きな人!」


好きな人か…純粋だった幼稚園の頃は一人いた。でも年が上がるにつれ色んな事を知り、恋愛なんてしなくなり友チョコも手作りではなく買うようになった。


「…いないねー」
「あーあ、好きな人が出来ないなんて可哀想ななまえ。今度合コン行こう?協力してあげるよ」
「要らないお世話、ノーサンキュウです!先に上がるね」


マフラーを着けて外に出てはぁ…、と息を吐けば白い煙に変わる。寒いし何かリア充が何組かいる…クリスマスじゃねぇんだから止めろよ。だいたいバレンタインなんてチョコの売り上げのためにあるんだし。

カツカツとヒールの音を立てて歩いてると、路地から人が出てきた。


「え?」
「あ?」


うわ最悪…今会うのかよ。

松野一松…私が高校生の時から片想いの相手。
きっかけは覚えている。…今改めて思えば下らない理由で好きになったものだ。

お互い言葉を駆けず、夜道を歩く。

……ちなみに今私はチョコを持ってる。勿論手作りで本命。
松野を好きになった年から今年までバレンタインになると松野の分のチョコを毎年用意してる。
渡す勇気も無いのにね…

松野の家は知っている。次を右に曲がるに対して、私は真っ直ぐ進む。だから今しか渡すしかない。
目の前に松野が歩いてる。周りに人はいない。
行け!行くんだ私!受け取って下さいの8文字で終わるんだ。頑張れぇぇええ……え。

スッ、と松野は曲がってしまい別れる。

あーあ……、結局今年も渡せなかった。家に帰ってチョコ食べよう。
マジリア充滅べ。別れて孤独に生きろ。


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