そして再び惑わされる

「髪、長なったね」

長くなった髪の毛を耳にかけ、そのまま頭を撫でた。
理佐は頭を撫でられるのは性にあわないのか、少し目を細め、どういう表情でいたらいいのか分からないでいる。

その様子はまるで可愛らしい仔犬のようで、私は理性が音を立てて崩れ落ちていくのが自分でも分かった。

耳にフッと息を吹きかけると理佐は肩を震わせた。
「りさ、耳弱かね」
くすくすと笑いながら、真っ赤になった理佐の耳を唇で緩く挟む。
「ちょっと、ねる」
理佐は恥ずかしそうにしながら拒んで来た。


「……ねるとこういう事するの、嫌?」

少し首を曲げて理佐の顔を覗き込むようにする。
そうすれば理佐は断れないって分かってるから。

「............嫌じゃない」


その姿があまりにも仔犬のようで、

首輪もいいな、理佐は何色が似合うかな?明日にでも買いに行かなきゃ〜、なんて考えてた。

すると理佐は何もしてこない私にもどかしくなったのか

「ねぇ、ねる…」

そういい両手で私の頬を包むように触った。まるで割れ物を触るかのように優しい手つきで。そして私の顔を少し上に持ち上げ、ゆっくりと理佐の顔が近づいてくる。

緊張してるのか、理佐の睫毛は少し震えていて、顔も熱でもあるのかと心配してしまいそうなくらい紅い。


もう少しでゼロ距離。





「まだ。まだだめ」

「…っ、なんで」

お互いの吐息がかかる距離で、ねるは間に指を入れ理佐の唇を止めた。


なんで、なんて聞かれても答えられない。深い理由はないから。焦らされて泣きそうな理佐を見てみたいだけ。

「ん〜、…仔犬にはご褒美の前は『待て』。」




クスクス笑いながら言うと気を悪くしたのか理佐は近づけていた顔を離し、座っていたベッドに寝転がった。

その勢いでベッドのスプリングが弾み、私は少しだけその余波を受ける。

「ねぇ理佐」

寝転んでいる理佐に横から覆いかぶさるようにすると、理佐は顔を私から背けようとした。

反抗期かな?なんて冗談っぽく言いそうになったけど、理佐とこれ以上気まずい雰囲気になるのは嫌だから止めとこう。


背けられた顔を両手で挟み顔をこちらに向かせようとしても、理佐がヤダヤダと足をばたばたして抵抗してくる。

だから無理やり顔を向けさせて唇を塞いだ。
さっきまでうるさかったのに何も言ってこない。

「ご褒美のチュー。

嫌だった?」

耳元に口を寄せ呟くと、理佐は私の首に腕を回してきた。

「……もう1回。」


何をして欲しいのか分かっているけれど、私は普段しない理佐がおねだりすることが嬉しくてつい意地悪をしてしまう。

「もう1回って、なにを??」
「やだ。言わない」
「言わんと分からんけん」
「……ご褒美」
「ご褒美って??」

こんな会話を続けてると、理佐は「白々しい…」とぼそっと呟き、後ろに回していた腕で私の後頭を抑え強引にキスをしてきた。

「ちょ、理佐」
「…なに」

理佐はねるに散々揶揄われたのが癪に障ったのか声がいつもより少し低い。

理佐は何度も角度を変えながら啄むようにキスをする。すると理佐はねるの唇をペロッと舐め、「…開けて」と呟いた。

「やっぱ犬っぽい…」

思ったことが思わず口から出てしまったが、理佐はもう何も言わずにねるの唇を舌でこじ開けた。




...end


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