私が死んでから一年。
相変わらず、恋人だった蓮二には彼女ができていない。
私の事が忘れられないのか、それとも彼女ができないのか、つくりたくないのか。
理由は分からないけれど、前者だったら、嬉しい…かな。
だけど、私は―…。
ありがとう、そして
(『愛してる』)
一人でソファに座り、本を読んでいる蓮二の後ろにつく。
本を読んでると言っても、多分ボーっとしているだけだろう。
…だって、本が逆さまだしね。
彼は、私が後ろにいるということに気づいていない(と、思う)
そーっと、蓮二の耳に語りかけた。
『…蓮二』
バッ、とでも効果音がつきそうなほど、勢いよく振り向く彼。
…びっくりして、少し後ずさってしまった。
「名前…?」
ああ、気付いてくれたんだね。
すごく、嬉しいよ。
「そこに、いるのか…」
私がいるべき場所を見つめ、呟く。
そうは言っても、姿は見えていないみたい。声は、聞こえている…のかな?
『…久しぶり、だね。元気だった?』
「…久しぶりだな。元気…ではないかもしれない。…お前がいなくなってしまってからな」
『そう…』
ねえ、蓮二。
分かる?わたしがどうしてここにやってきたかを。
『私ね。今日、あなたに伝えたいことがあって来たの』
伝いたいこと。
それは―…。
『私以外の人を見つけて、幸せに暮らしてほしいの』
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