『ぜーんざーいくーん』
「……」
『聞こえてるー?ねぇ、ぜんざいk「もっぺんチャンスやろか」ごめんなさい財前くん』
いやぁ、だって財前とぜんざい、ってほら。響き似てるじゃん?
笑ってやったら、無言で睨まれた。
…怖い(´・ω・`)
ぜんざいくん
(わ、わざとじゃないんだからね!)
「お前何やの。はよ、出てけや」
『ちなみに言っときますが、私の名前は苗字名前です」
「…ハッ」
な、なんだ、コイツ。
私の名前聞いたら鼻で笑ったぞ!
む、ムカつく…。
放課後の保健室のベッドに、横たわる男子生徒が一人。
そしてそばの椅子に座る女子生徒が一人。
『いやー、そうしてあげたいのは山々なんだけどさ、先生が来ないからにはできないんだよねぇ』
あはは、と笑うと再度睨まれた。
だから怖いんだってば!
実際仕方ないんです。
クラス保健委員であり、その上もう一人の男子委員は欠席だし。
保健室の先生には、「これから会議だから、先生が来るまでかわりに、財千君看といてねー」なんて言われちゃったし…。
私が君を看ることは、必然的になってしまうんです。
本当は私だって、見たいアニメがあるから、帰りたいんだけどね!
『…体調、どう?』
「…見れば分かるやろ」
『あ、いや、まぁ…うん。そうなんだけどさ…』
財前君は腹痛らしい。
それから財前君は、一言も話さない。
…無言って、結構きついんですが…。
うーん。
今更だけど、いたら邪魔かなぁ。
…ホント今更だけど。
やっぱこういうときは、一人がいいのかな。
…まぁ、財前君の性格を考えると…うん。
一人の方が気楽そう。
『なんか…邪魔みたいだし帰るね』
未だ無言の彼に、一声かけ、立ちあがった。
いや、
立ちあがったつもりだった。
『……』
「……」
あの!あの財前君が!
私の手を掴んでいる。
『ぜ、…じゃなくて、財前君…?』
「今、ぜんざい、言おうとしたやろ」
『ぜ、全然!…でこれは?』
「…なんや」
『いや、その…この手は何なんでしょうか』
「…別にえぇやろ」
『!!』
デレたー!?
あのツンデレ(8:2もしくは9:1でできている)で有名な財前君が!
『…ふふっ』
「何笑ぅとんねん。…きしょいわ」
『ひどっ。…なんか…んー。新鮮でいいなぁ、って』
君のツンデレ具合がね、そう言いながら、掴まれた手にそっと、自分の手を重ねる。
「お前、出てけや」
少し顔の赤い彼が言い放つ。
…そんな顔で言われても、説得力ないんだけどね。
なんてまた、笑ってやった。
(財前君、顔赤いよー?)
(うるさいわアホ…)
(先生、入るに入れないわ…)
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