『蔵ノ介、今日はこのメニューで、ってオサムちゃんから』
「おぉ、すまんなぁ」
『んーん』
私の彼は、完璧人間といわれている。
いや、まぁ、そうではあるんだけど。
「じゃあ、今日は、このメニューな。解散!」
「「「「はい!!」」」」
皆がいなくなった後の部室には、私と蔵ノ介、二人っきり。
これはもしかして…。
「名前ー。ちゅーしてくれへん?ちゅー」
『…はぁ。相変わらずだね、アンタは』
めんどくさい、
けど可愛いなんてね。
(私の前だけ、甘えたさん、って…)
「だめなん?なぁー」
すごい、と私は思う。
目の前にいる蔵に目を向けると、首を少し傾げながら「ちゅー」なんて言っている。
皆の前では完璧で一切無駄のない、白石蔵ノ介のはずなのに。
二人っきりになると、途端にこうなるなんて…。
寧ろすごいよ、尊敬に値するわ。
きっとこの姿を知っているのは、この世界で、私しかいないだろう。
『えー…。まぁ、嫌じゃないけどさ…』
蔵ノ介とのキスは好き。
蔵ノ介からの、愛が伝わってくる、っていうかなんていうか…って何言ってるんだろう、恥ずかしい!
うー…とうなりながら、しゃがみこんでしまう。
あー、ヤダ。絶対今、顔真っ赤だ。
「どないしたん?」
シュンとでもいおうか。
そんな効果音でもつきそうなくらい、私を心配してくれる、蔵ノ介にキュンと胸が高鳴った。
『…キスしよっか」
「えぇ!?ほんま!?」
パアァッと花がでてきそうなぐらい笑った彼を見ると、心が温かくなる、というのも事実。
『うん』
「ほな…」
ほんのり赤みがさしている、蔵ノ介の顔が近づいてくる。
唇に、唇が触れた瞬間。
(あぁ、やっぱ、蔵ノ介の事が大好きだ)
なんて愛しい体温を感じながら、柄にもなく思った。
(…あれ、部長っすよね)
(…多分、そうやろ)
(完璧な部長は何処へ)
なお様へ→
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