『おはよう、幸村』
私はこの男が苦手だ。
「おはよう、苗字さん。しかし今日も相変わらず、ブサイクだね★」
『……』
前言撤回だ。
私はこの男の事が大嫌いだ。
売り買い言葉
(こんなことを言われて、傷ついていないわけがない)
ムカムカ。
言わなければよかったな、ホント。
幸村はこういう奴だった。
「ん?どうしたんだい?あ、図星だから声も出ないって?」
『だまれ』
いや、可愛くはないだろうけどさ。それは直球すぎるだろ。
ホントにうざいうざい。
いい加減相手にしなければいいのにな、私も。
幸村の隣の席になって2ケ月。
ずっとこの状態が続いてる。
特に幸村とは関わりもなくただ偶然にも、隣の席になった初日からこうだ。
「ははっ、苗字さんって近くで見たら予想以上に不細工だね」
『…は?』
私は一生忘れもしない。
いや、忘れることのできない思い出だ。
『…はぁ』
幸村の相手をするのもいちいち疲れる。
何かとあれば、腹立つことばっか言って。
…言われる身にもなってほしい。
4時間目、英語。
『うーん…。分かんない』
自分の苦手な英語の時間。
受動態とかなんなんだよ、チクショー。
あれか、腐で女子のあれか。
受けのことなのか。
「そんなわけないだろ」
ぼそっと隣から嫌な奴の声が聞こえる。
あれあれー?私今、声に出してなかったような気がするんだけどなー。
気のせい?
「ふふっ」
…怖いんですけどー!
心読まれてるんですけどー!
そんなこんなしてる間に、先生にあてられてしまった。
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