たとえ付き合っていたとしても、その間に愛がなければ関係は成り立たない。
そんな状況に追い詰められた私はどうすればいいだろう。

私の彼氏は優しい。いつも私のことを気にかけてくれて、一緒にいてくれる。

「名前、帰ろ」
『うん』

帰りだって部活が終わったら私を捜して帰ってくれる。こんな優しい彼氏、他にはいないだろうって。毎日が幸せで。…でも。

校門を出た途端、離された手。さっきまで温かかった熱は一瞬にして消え去った。
彼は変わった。"あの子″に出会ってから。

事は一週間ほど前の話。雅治のクラスに転校生が来たそうだ。私は顔を一度も見たことはないのだが、容姿は至って普通らしい。でも、何故か放っておけない、そんな愛おしい存在だそうだ。なぜ私がそれを知っているのかというと、雅治から聞いたのだ。…紛れもない、彼の口から。

「放っておけない、可愛いやつなんよ」
『そう、なんだ』

まさか彼の口からそんな言葉を聞くとは思ってもいなかった。
可愛い、なんて私も言われたことなんて数回しかなく。別に可愛いなんて思っているわけじゃないけれど。それから、雅治は彼女の話題をする度に可愛い、と言うようになった。
…彼女としては面白くない。でも、そんなこと言えないから。

もし、雅治があの子のことを好きになってしまって、別れようといってきたら私はどうすればいいかな。
別れたくない、そう、めんどくさく泣いて喚いて、纏わり付きたくない。黙って受け入れるしか、選択はないのだろうか。

『まさ、はる』

隣を歩いているはずなのに、何故か遠くを歩いているように見える彼へ声をかけた。

「なん?」

いつもと変わらない、優しい顔。でも、以前とは違った笑み。私には分かるよ。

『…なんでもない』

なんじゃそれ、そうクスクス笑う彼に見えないように顔をしかめた。また、言えなかった。
さよなら、なんて自分から言えない。雅治から言われるのをただずっと待っている臆病者。

「名前、愛しとぅよ」

きっとその言葉はもう、聞けることはないのだろう。

君がくれた白い嘘

title by 確かに恋だった様

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