「問3の答えを苗字さん、答えなさい」
『…え』

全然、分かんない。
どうしよう。

「The car is made in Japan.だよ」
『えっ…?』

幸村…? あの、幸村が。
なんと、私に答えを教えただと…!?
とにかく、答えよう。

『――――――.…です』
「よろしい」

…ふぅ。幸村のおかげだとしても、ありがたい。
後でお礼を…。だけど、またなんか言われるのかな。
…やだな。
でも教えてもらったことには変わらないから、一応言っとこう。

―昼休み。
お弁当を広げ出した幸村に近づく。

「なんだい」
『えっと…。さっきはありがとう』
「ああ、あれね。あんな簡単な問題も解けないなんてびっくりしたよ」

笑顔でまた言うから、何気に傷つく。
押さえろ、押さえろ私。

『…英語は苦手だから』
「苦手?あんなの苦手どころじゃないだろ。苗字さんって頭、ホントに大丈夫?」

ただお礼を言っただけなのに。

こんなのいつも言われ慣れてるじゃない。

『別に…普通だよ』
「普通?笑わせるね。よく一人で英語を勉強しているのを見るけど、その成果は出てるのかい?君の努力は無駄みたいだけど」

こんなに心が痛いのは、なぜ?

『………によ』
「え?」
『いい加減にしてよ!』

いつもなら笑って返していたのにね。
今日だけは許せなかった。止まらなかった。

『っどうしていつも、そんなこと言うの!? 私、幸村に何かした? ねえ、言ってよ!』

いつもそうだ。
幸村はいつも私の事を見下して、笑って。
私が、どんな気持ちでいるかなんて知らないんだ。

「苗字さん…?」

クラスの人がこっちを見てる。何事かと野次馬も出てきた。

自分の努力を馬鹿にされて悔しかった。
鼻で笑われて悔しかった。

でも、何より自分の好きな人にそんなことを言われるのがすごく悲しくて、辛かった。

ジワリと涙がにじんでくる。
目の前にいる幸村は、驚いている。

それは、そうだろう。
幸村にとってはいつもの光景だったのだろうから。
涙を幸村に見せたくなくて、急いで屋上へ走り去った。

「苗字さん!」

後ろで幸村が呼んでいたけど、そんなの知らない。

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