「きゃー!幸村君頑張ってー!」
「かっこいいー!」
きゃーきゃーとうるさいぐらいに叫ぶ、友達を片目に見ながらテニスコートの中で練習している、彼。
幸村君と見つめる。
『…がんばれ』
遠くからでも、いい。
君にこの声援が届くならば、ここからでもー…。
ファンからの恋
(実は私、ファンなんです)
「つーか名前さ、毎日テニスコート行って何してんの?あんた応援してたっけ?」
『してますとも!…まぁ、大きい声ではないけど』
テニス部の部活が終わるまで応援をしていた私と友達は、彼らの練習が終わる頃には、すでに校門のそばにいて、先ほどの話をしていた。
「なんか、名前って私みたいなミーハーじゃないよね」
と言いながら、苦笑する友達。
まぁ、ね。
『そこまで、熱烈的に…。というかあんまり大きい声出せないのもそうなんだけどさ。私は、静かに応援するタイプだから』
なるほどー、と納得した彼女に見えないように、小さくため息をついた。
じゃあ帰ろうか、なんて話をして一歩、足を踏み出そうとした時。
「苗字さん、」
後ろから、好きな人の声が聞こえた。
(え、?)
まさかな、とか幻聴かな、開き直って後ろを振り向いてみると、
『え…』
そこには、息を切らした幸村君がいた。
「…幸村君!」
友達が騒いでいるのも気にならないぐらいに、見とれてしまった。
あの、彼に。
息を切らしているから、そんなに走ったのかと思ったけど、そうでもないらしい。
額には、汗一つない。
『え、な、そ、…どうしたの?』
どうして幸村君が私を呼びとめたのかもわからないし、友達も、突然のことで戸惑っているようだった(ちなみに幸村君とは同じクラスである)
「あ…、いや、苗字さんの姿が見えたから」
『は、はぁ…』
ドキドキとなっている心臓の音が聞こえてたりしないかな、と今更ながらも顔が赤くなってしまった。
だって、幸村君がこんなに近くにいるなんて、始めてで。
嬉しくて。
「あの、苗字さんの友達、だよね?君」
友達が突然尋ねられ、びっくりしているのが分かる。
「へ!?あ、そうです!」
「やっぱり。…お願いなんだけどさ、苗字さんと一緒に帰らせてもらえないかな?」
『…え!?』
「へ!?」
こんな美味しい展開なんて、存在していいんだろうか。
もしかしてこれは、幻聴なのかもしれない。
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