息をのむ音が聞こえる。
「どういう、意味だ」

どういう意味だなんて、蓮二が一番分かっているでしょう?

『…今、蓮二が誰とも付き合っていない理由は、私の事が忘れられないから?』

「っ…」

…無言は、肯定と受けとめる。
いつかあなたは、私にそう言ったね。

『私は、蓮二に幸せになってほしい。私に縛られてほしくないの。お願い、』

『分かって…っ』
絞り出すように出された私の声は、ちゃんと彼に伝わっているようだった。

「俺は、お前をまだ『分かってる…!』…!」

蓮二の言いたいことは、分かってる。
気持ちだって、分かってるよ。
だけど、だけど

『ほんとうはっ、…私だってね、誰かに蓮二をとられたくない。
だけど、だけどっ…。私はもう、生きてはいないから』


ごめんね、「死ぬまで一緒にいような」、そう約束したのに。

『約束、守れなくてごめんなさい…』
そう呟くと、徐々に体が透けて消えていっているのが分かった。

「名前…!?」
驚きに目を見開く彼。
あれ、何年も付き合っていたのに、こんな姿見たことないや。

『もう、お別れみたい』

本当に、本当に。
私は、あなたといられて幸せでした。
短い人生の中でも、いつも私の中心にいたのは、柳蓮二という、大きな存在でした。

「名前…!」

彼が、私の体へと手を伸ばす。
…姿が、見えているのかな。

『…っ』
涙が滝のように、大きな粒となって流れ落ちる。

蓮二、蓮二。

好きなの、まだ。死んでいてもなお。
好きなの…っ。

「俺は、俺は今も…っ」

ああ、意識が遠のいていく。
まだ、聞きたい。
彼の声を。
彼の…





…聞こえたよ。
微かだけれど、あなたの愛の言葉を。



私の最後の言葉は、
あなたに、聞こえたかな…?


意識が途絶える前の一瞬、彼の表情を見ることができた。

…優しく、そして小さく笑って泣いていた。




(さよう、なら)
(いつか、あなたの幸せな未来を、私にも見せてね)



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