「なまえ、はい。プレゼント!」
「わぁーありがとう!」
「え、なまえちゃんって今日誕生日だったの?じゃあお祝いにポッキー1本あげる」
「ポッキー1本って。あたしはグミ3個!」

お昼休み、クラスメイト達からたくさんの誕生日プレゼントをもらった。皆からお祝いされる喜びを感じて皆から貰ったお菓子を食べている。そんな呑気にお菓子を食べている私にも気がかりな事が一つ。

彼氏が誕生日を祝ってこない!!
彼氏の名は幸村精市。あれ、今日学校来てるよね。私達順風満帆でしたよね。プレゼントおろか会いにも来ないしメールも電話も寄こさない。もしかして精市、私の誕生日忘れてるんじゃ。そんな、彼女の誕生日忘れる人じゃないよね…?

誕生日に暗い気持ちになっても仕方ないと思い、無我夢中でお菓子を食べまくる。それでも、お菓子を食べてても頭の中に浮かんできちゃう精市の顔。ああ切ない。

やっぱり、彼氏に、精市に一番に祝ってもらいたかったな―――

―――…

そんなこんなで時は過ぎ、放課後になってしまった。結局今日一日精市は私の所に来なかった。一番祝ってほしい人に祝ってもらえないなんて、なんて最悪な誕生日なんだ。
気分を落としたまま教室を出る。すると階段の前で見覚えのある黄色いチェックのマフラーをした見覚えのある人物が壁に寄り掛かって立っていた。

「精市!」
「なまえ。一緒に帰らない?」
「う、うん!」

今度こそお祝いしてもらえるかもしれない!なんて思いで精市と手を繋いで歩いていたけど、精市は誕生日について一切触れてこない。最初はサプライズかな、なんて前向きに考えていたけど、前向きに考えているのが馬鹿らしくなってきた。きっと精市は私の誕生日を忘れているんだ。

手を繋いだ精市に身を任せたまま歩いていると、歩く感触がコンクリートからいきなり砂利に変わった。

「え…?」
「いいから」

戸惑いながら精市に促されてベンチに腰掛ける。ここは、初めて私達がデートした公園…?状況がよく読めなくて思考回路がこんがらがる。

「…急に寒くなったね」
「う、ん。そうだね」

話している精市の頬が寒さで赤くなっている。精市は色白だから、頬が赤くなるのがよく目立つ。

綺麗だなぁ…
ずっと精市を見つめていると急に精市が私の方に顔を向けたから、精市と目があった。急に流れ出す沈黙。漂い出す甘い雰囲気に、これからの事を期待せずにはいられない。

「…なまえ」
「、ん?」
「目、閉じてくれるかい…?」

言われる前から閉じるつもりでした、なんて心の中で呟きつつ目を閉じる。すると、唇が重なる。精市のキスが好きだ。優しくて、とろけそうに甘くて。
キスだけに意識を持ってっていると、急に指にひんやりと冷たい感触。なんだろう、と思い目を開けると精市も同時に私から顔を離した。

左手の薬指にある、銀色に輝く光。


「え、ゆび、わ…?」

リングの真ん中の小さなハートの中には薄い水色の石が入れられていた。

「誕生日おめでとう、なまえ」
「っ…!」
「ずっと忘れてるふりしてて、すまない」
「やっぱり…!忘れられてると思ってショックだったんだから…!」
「はは、すまない。少しでも驚かせたいと思って」

誕生日を忘れられていなくてほっとしたのとサプライズの感動で涙が出てくる。ハートの真ん中の水色の石、覚えてるよ。

『見て。これ、俺の好きな石なんだ。ブルートパーズ。』
『へぇー。綺麗な水色。』
『だろ?しかもこの石、11月の誕生石なんだよ』
『え、じゃあ…』
『そう、なまえの誕生石。』

今の時期、引退して部活の引き継ぎ作業でもっと忙しいと思うのに、いつの間に用意してくれていたんだろう。

「っ…ありがと、」
「ふふ。気に入った?」
「、凄く…!」
「誕生日プレゼントっていう意味もあるけど、」
「へ?」
「なまえが俺のだって印。」

そう言って精市は自分の左手を私の前に上げた。

「ペア、リング?」
「うん。これでいつでも君の傍にいれる、なんてね」
「…精市、」

好き、という言葉は、精市の唇に飲み込まれた。
最悪な誕生日、なんて言ったけど前言撤回。

人生で一番の誕生日になりました。

いつまでも君の傍に、

次の日友達に左手を見られて冷やかされたのは言うまでもない。

お礼文→



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