「なまえさん、メリークリスマス」
「メリークリスマス、山岳」
「えへへ、プレゼント開けてください」
恋人に促されて、赤と緑のラッピングを開ける。真波山岳という男が選ぶプレゼントは一種独特で、それは長年付き合ったなまえにしてみても規則性を掴ませないのだが、ことクリスマスプレゼントに関しては一つだけ確実な物があった。
探らなくとも出てきたのは、いつの頃からか毎年クリスマスプレゼントに入ってくるようになったオーナメントだった。今回は天使である。
「わあ、可愛い!」
思わず歓声が上がる。喜んでもらえてよかった、と真波が微笑んだ。
なまえは早速立ち上がってツリーに近付く。そこには以前真波から送られたオーナメントが飾られている。
いつの間にか増えたそれらに心がほわんと暖かくなったところで、背後から抱き締められた。
「さ、山岳?」
なまえの声に山岳は答えず、首筋に優しく唇を押し当ててくる。それは情欲を感じさせるものではなくて、ただ親愛の情を伝えてくるものだった。
緩く身体を揺らしながら、なまえは自分の首のところで交わる真波の骨張った手に自分のそれを重ねた。
「山岳」
「はい?」
「ありがとう」
このツリーが彼に贈られたオーナメントでいっぱいになるまでどれくらいかかるだろうか。
きっと随分長くかかるだろうけれど、その間彼と一緒に過ごせるならそれはとても幸せな事だ。
短い呟きのような言葉で彼にどれだけ伝わったかどうかわからない。けれど彼は案外汲み取ってくれるから、きっと伝わっただろう。