影山 飛雄
- ナノ -


出会い



北川第一中学。地元の中じゃバレーの強豪校だ。入学して、ようやく部活が本格的に始まって、俺は毎日にワクワクしてた。
一緒に入った新一年生達は、練習キツイよなぁとか、先輩たち怖いよなぁなんて話してるけど、俺はウンって一緒になって頷く事は出来なかった。
そりゃ、小学校のクラブとはバレーのレベルがぜんぜん違う!メチャクチャ上手い先輩がいる!
毎日毎日、はやく部活に行きたくて、放課後が待ち遠しかった。

中でもとくに、2コ上にすげー上手いセッターがいる。
オイカワさんというらしい。

オイカワさんとよく一緒にいる、イワイズミさんも上手いし、しかもかっこいい。
でも俺はセッターだから、とくにオイカワさんに興味津々だ。

オイカワさんは、サーブもすごい。
俺はまだジャンプサーブとかできないから、あんな風にできるようになりたい。それからそれから、ブロックもすごい。ここにいたら、このチームにいたら、あんな風になれるのかな?

そう考えただけで、わくわくするのに。みんなは、違うんだろうか。








「影山くん、ひとりで居残り練習?」


誰もいない体育館でサーブの練習をしていると、ドアからひょっこり顔を出す人物がいた。
誰だっけこの人。ああそうか、女子マネージャーだ。名前は、たしか・・・



「名前、さん」



まだ入部したばかりで、部員全員の顔と名前はわからないけど女子が一人いたのを思い出す。
マネージャーがいるなんて、やっぱり中学校ってスゲー。

そしてその人に、オイカワさんがやたらと『名前、名前』と付いて回っていたので名前は覚えてた。
それが苗字なのか下の名前なのかも知らないけど。名前”先輩”って呼んだ方が良かったのかな?ケーゴなんか小学校じゃ使った事ない。まだまだ、わからない事だらけだ。


名前さんは、なんていうか・・・クラスの女子とは全然違う。うまく、いえないけど。学年はいっこしか変わらんないのに、なんか大人なんだ。


今日は2・3年生が別室でミーティングだから、他の1年生は基礎練が終わったら帰るスケジュールだった。
ミーティングって、マネージャーは参加しないのかな?



そしてその人は、人懐こい笑顔で近づいてきた。
男ならともかく、女の先輩とふたりっきりという経験があまり無いため俺はちょっぴり緊張した。

ウス、と俺が返事をすると名前さんは、俺が自主練で散らかしたボールを集めながら「えらいね」と言って笑った。


「他の1年生は、基礎練だけでヘトヘトでみんな帰っちゃったのに」
「えらくないっス。もっと、うまくなりたいんで」

一人だとサーブ練習くらいしかできないっスけど。そう言うと名前さんはすこし考えてから、「私で良かったら手伝おうか?」と言った。

俺は俄然興奮した!女子とはいえ、北一バレー部だ。きっと上手くてスゴい人に違いない!!


「え!い、いいんですか!」
「あ、いや、たいしたお役に立てるかわからないけど・・・」


よろしくお願いします!という俺の声が響き渡り、俺はまさか北一バレー部の先輩と、マンツーマンで練習をしてもらえる事になった!








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