「凜々蝶さま、おはようございます」
僕、白鬼院凜々蝶の朝はこの一言から始まる。
僕のSSであり恋人でもある御狐神くんが、毎朝起こしに来てくれるのだ。
それどころか、朝食の用意までしてくれる。
さすがにそこまでやってもらうのは申し訳ないと言うのだけれど、彼は笑っていつもこう言う。
「凜々蝶さまのお役に立てることが1番の幸せです」
その度に、僕は何も言えなくなるのだった。
今日もそんなやりとりをして朝食をとった後、僕たちはラウンジへ向かう。
「ちょっと反ノ塚!あんた今日学校でしょ!遅刻するわよ!」
「んー…あと、5分…」
階段を降りる途中、反ノ塚を起こす野ばらさんの声が聞こえてくる。
そういえば昔から彼は寝起きが悪かったと思いを巡らせ、今も変わらないのかと少しおかしくなる。
ラウンジに降りると、すでに髏々宮さんが来ていて、僕なら絶対に食べられないであろうボリュームのあるものを食べていた。
「凜々ちゃん…おはよう」
「…おはよう」
彼女はこちらに気づくと挨拶をしてくる。
挨拶を返し、近くのテーブルについた。
「凜々蝶さま、コーヒーと紅茶、どちらを飲まれますか?」
御狐神くんが僕に問いかけたとき、ちょうど聞こえてきたのはどたばたと階段を下る足音。
「おい残夏!!どうして起こしてくれなかったんだよ!?」
「僕は何回も起こそうとしたよ〜?それでも起きなかったのは渡狸でしょ〜?」
半分泣いているのではないかと思われる渡狸くんの声と、それに答えるのんびりとした夏目くんの声。
そんな平和な朝の光景に、僕はくすりと笑いを零す。
「笑うなー!」
そんな僕に気づいた渡狸くんが、涙目で叫ぶ。
その様子に僕はさらに笑ってしまうのだった。
妖館の、そして僕の朝は、こうして始まる。
妖館の朝 -平日編-
(渡狸…おはよう…)
(カ、カルタ…おはよ)
(渡狸くん、急がないと本当に遅刻するぞ?)