「帽子屋さん!?」
勢い良く開け放たれたドア。
ヴィンセントの目線の先には頭に包帯を巻き、ベッドに横たわるブレイクの姿。
「…ヴィンセント様?」
いつもなら自分を睨みつけてくる紅い瞳が、今は力無く自分を見つめている。
「怪我の具合は?大丈夫なの?」
「こんなの…掠り傷デス。」
ゆっくりと体を起こすブレイク。
ヴィンセントはブレイクに駆け寄り、そっと肩を抱き寄せた。
「寝ていたほうがいいよ。」
「大丈夫デス。」
強がってみせてはいるが、ブレイクの顔色はいつもより悪い。
大丈夫だと言われても…。
「説得力、ないよ。」
ヴィンセントはブレイクを無理やり寝かせ、頬に優しく口づけた。
「…情けないですネ。チェイン如きにこんな…。」
顔を歪め、頭を抑えるブレイク。
「無理しないほうがいいよ、帽子屋さん。」
ヴィンセントはブレイクの頭にそっと手を置いた。
「痛いの痛いの飛んでけー♪」
「……は?」
「怪我が早く治るおまじないだよ。」
「…馬鹿デスカ?」
呆れ顔のブレイクに微笑みかけ、頭から手を離す。
「じゃ…傷に障るから、僕は帰るよ。」
「えっ…待って!」
不意に、立ち去ろうとするヴィンセントの腕をブレイクが掴んだ。
「…どうしたの?帽子屋さん。」
そう尋ねると、ブレイクは顔を赤らめ、小さく言った。
「私、何だか心細くて……、その…、傍に、居てくれませんカ?」
その言葉にヴィンセントの胸が小さく弾む。
「うん、喜んで。」
ベッドの縁に腰掛け、綺麗な銀髪を指に絡めた。それを安心した表情で見つめるブレイク。
「僕に出来ることがあったら何でも言って?」
「何でも?……では、…キス、してくだサイ。」
「キス?…お安いご用意ですよ、姫。」
可愛い可愛いキミに
最上級の愛と
最上級の笑顔を
「怪我、早く治してね。僕の帽子屋さん。」
キミに捧げる最上級