「……穏やかだな」
「……そうだな」
縁側に座り、才蔵と茶を飲んでいた穏やかな午後。
ふと呟いた自分の言葉に応えた才蔵の横顔を眺める。
その表情は柔らかい。
「才蔵ーっ」
ふいに誰かの足音が聞こえてきた。見れば、伊佐那海がこちらに駆け寄ってくる。
その手には大量の甘味が抱えられていた。
見て、と彼女は満面の笑顔を浮かべる。
「誰がこんなに食うんだよ!?」
才蔵はその量に驚き呆れている。
そんな風に伊佐那海とじゃれ合っている才蔵をぼんやりと見つめる。
丸くなった、と思う。
しばらく城を開けて戻ってきたとき、その変化に驚いた。
と同時に、嬉しくもなった。
出会ったばかりのころは言動も表情もどこかピリピリとしていて、近寄りがたいと思わせるような感じだった。
だが今は、纏う雰囲気さえも、少し柔らかくなったような気がする。
いい変化だと思う。
上田は居心地の良い場所だ。
才蔵は少しでもこの場所に安らぎを感じてくれているのだろうか。
「あー!」
ふいに聞こえた伊佐那海の声に、考え事から現実に引き戻される。
どうやら、才蔵が何かやらかしたらしい。
言い合いはだんだんと加速していく。
ため息の中に苦笑を滲ませながら、喧嘩を仲裁するべく二人の間に入るのだった。
安らぎのある場所
(安らぎにも似た)
(この時間が)
(ずっと続けばいいのに)