喉が熱い。
灼けるような感覚と共に、激しい痛みが襲ってくる。
冷たい床に転がり、才蔵は胸を押さえた。体を丸め、激しく咳込む。
息ができない。
胸を刺す痛みは激しさを増し、意識が朦朧としてきたとき。
「……才蔵」
凛とした声が耳を打った。
何とか目を開けて声のする方に視線を向ければ、見慣れた姿が目に入った。
アナスタシア。
妙に大人びている幼なじみ。
「…毒を飲んだのね」
無表情の中に少しだけ感情を滲ませた声音で彼女は呟く。
そして何も答えられない才蔵の傍らに膝をついた。
伊賀の里では、毒に対して耐性をつけるために幼い頃から毒を飲む。
そして今日、才蔵は初めて毒を飲んだ。
「…耐えて」
彼女が才蔵の髪を優しくなでる。
彼女の冷たい手だけが、才蔵をこの世につなぎ止めてくれる気がした。
幼き日の
(死んでしまったら)
(意味がないわ)
(一流の忍になるまでは)
(どうか耐えて)