「…それにしても、暇だな…」
上田城の屋根に寝そべり、才蔵はひとりごちる。
流れる雲。
空を飛ぶ小鳥。
ここ数日は敵の襲撃もなく、目に見えるもののどれをとっても平和だった。
「…体、動かさねえとなまっちまうよな…」
そう呟くも、本音を言えばここで寝ていたかった。
「どうすっかなあ…」
心地好い陽射しが才蔵に鍛練に向かうことをためらわせる。
明日にしようか、と迷っていたとき。
「才蔵!」
慣れた気配が屋根に降り立った。
音もなく降り立ったそれは真っすぐに才蔵のもとへ進んでくる。
そしてそれは才蔵のすぐそばまで来ると、もう一度才蔵を呼んだ。
「才蔵」
「…佐助」
どうした、と寝転んだまま佐助に問い掛ける。
「鍛練。付き合え」
そう言って佐助はくないを掲げる。
瞬間、才蔵のそれまでの修行に対する面倒くさいという感情が消えた。
「……ああ」
なんとなく気持ちが高揚してきて、才蔵は笑った。
武器を構えて立ち上がる。
そして佐助と才蔵は、同時に屋根から飛び降りた。
鍛練
(一人でやるよりは)
(マシだから)
(付き合ってやるよ!)