「…助!平助!!」
名前を呼ばれ、誰かに体を揺さぶられる感覚。
意識が浮上して、俺は目を開けた。
「…俺の授業中に寝るとは、いい度胸じゃねぇか…」
「……へ?」
最初に目に入ってきたのは、怒りを押し殺した様子の土方先生。
たっぷり3秒間はかけて、今の状況を把握する。
壁にかけられた時計は、今が5時間目の授業中であることを示していて、目の前には古典の教科書やらノートやらが。
そこでようやく、自分が授業中に寝てしまっていたことに気づく。
「す、すんません!!」
慌てて謝ると、土方先生はふっと表情を和らげた。
「まあいい……今度からは気をつけろよ」
そう言って、彼は黒板の方へ背を向ける。
なんとか許してもらえたのだろうか…?
厳しいことで有名な彼のお咎めを受けずに済みそうで、ほっと安堵の息を漏らす。
ふと視線を感じて横を見ると、斎藤が呆れたようにこちらを見ていた。
そういえば、起こしてくれたのは彼なのだろうか。
きっとそうだろうと推理して、ありがとうと手を合わせると、斎藤は気にするなという風に笑った。
そろそろ集中しようとノートを開き、黒板を見つめる。
不意に、教室の前のほうに座っている沖田が振り返った。
悪戯っぽい光を宿した目と目が合う。
意味ありげな視線を向けてくる彼の唇が動いた。
声なき声で伝えられた言葉は『ドジ』。
さすがに反論できなかった俺は、残り少ない授業時間を気を引き締めて頑張ったのだった。
五時間目は睡眠学習で
(ゲーム控えなきゃかな…)
(平助ってばドジだなぁ)
(あまり先生に迷惑をかけるな)