中庭でぼんやりと空を見上げている姿が酷く儚く思えて、気づけば後ろから抱きしめていた。
「……はじめ君?」
「……消えないでくれ、総司」
驚いたように自分の名前を呼ぶ彼の声を遮るように呟いた自分の消え入りそうな声が空に消える。
「………消えないよ」
そう言って笑って、総司は抱きしめてくる。おそるおそる自分もその背中に腕を回して、その温もりに酷く安心すると同時に、彼の少し痩せた体に目を見張った。
そんな事実を掻き消すようにその体を強く抱きしめる。
どれほどそうしていただろうか。
「一君……泣かないで」
困ったような声の総司の指が、頬に触れた。
そうして初めて、自分の頬を流れる液体に気づく。
「お願いだから…」
「あ……」
そう言った声が震えているような気がして、慌てて顔をあげた。
見上げた総司の瞳からは、一筋の涙が流れていた。
それでも。
その顔は微笑みを浮かべていて。
胸が締め付けられる気がして、涙が溢れ出すのが止められない。
「……っ、」
どうにかして嗚咽を堪えようとぎゅっと目をつむったとき。
唇に、柔らかいものが触れた。
驚いて目を開くと、間近に総司の顔。
ようやく、自分が口づけられているのだと理解する。
離さないように抱きしめる力を強めてくる手。
それに応えるようにしっかりとその体を抱きしめた。
はじめての口づけは涙の味がした
(流れる涙が)
(どちらのものか分からなくなるまで)
(俺たちは抱き合っていた)