久しぶりに掃除でもするか。
最近忙しくて掃除できなかった部屋は、かなり散らかっている。
オズとアリスは出かけていていない。
ギルバートは部屋を掃除するべく、箒を片手に立ち上がった。
30分もすると、部屋は大分片付いてきた。
休憩でもするかと、コーヒーを淹れた。
カップを持ってきてソファーに座ると、見計らったように戸棚の扉が開いた。
「やあ ギルバート君」
「…何度もいうが、おまえは普通に玄関から入ってこられないのか」
中から顔を出したブレイクに、ギルバートは冷静に返事をする。
こんなことには、もう驚かない。
「普通に入ってくるなんて、面白みがないじゃないデスカー」
そう言いながらブレイクは戸棚から出てくる。
ギルバートはブレイクの分のコーヒーを用意するため、台所へ向かった。
コーヒーを持って戻ってくると、ブレイクはソファーに座って待っていた。
カップを渡すと、ブレイクはテーブルの上に置いてあった砂糖をドバドバと入れはじめた。
若干呆れながら、ギルバートは一服しようと煙草を取り出した。
「あ!ギルバート君、私にも1本クダサイ♪」
ブレイクが顔を上げて、言ってきた。
「ダメだ!」
「何でですか?」
「おまえはただでさえ甘いものばっか食ってて体に悪いのに、さらに煙草なんか吸ったら危ないぞ!」
それに、最近力を使う回数だって…。
「オヤァ〜心配してくれるんデスカ〜?」
「!!べ、別に心配なんか…」
思わず否定してしまった。
「じゃあいいじゃないデスカ」
「ダメだ」
「え〜」
ブレイクが不満げな顔をする。ギルバートは必死で言い訳を考えた。
「これが最後の1本なんだ!」
短い時間で考えた最良の言い訳。
「…仕方ないデスネ。あきらめてあげマス」
ギルバートは密かに安堵した。
「そのかわり…ケーキ作ってください!」
「は!?ケーキ!?」
「ハイ♪」
ケーキか…。時間はかかるが、煙草を渡して身体を悪くさせてしまうより、ケーキを作るほうがずっといいだろう。
「分かった、ちょっと待ってろ」
「ハイ♪」
「やっぱり、ギルバート君の作るケーキは最高デスネ!」
ブレイクがチョコレートケーキを口に運びながら満足そうに言う。
「そうか?よかった」
「本当おいしいデス♪また作ってくださいネ?」
ブレイクの不意打ちの笑みにドキッとする。
「あ、ああ…また今度な」
その笑顔が見られるなら。
いくらでも、オレはケーキを作ろう。
煙草