「……吐きそ…」


メゾン・ド・章樫、1号室。

渡狸は、ぐったりとベッドにうつぶせていた。


「天気予報が雨だったのに、傘持ってかないからだよー」

「るせ…」


呆れたような夏目の声が聞こえる。

そう、渡狸は風邪を引いて寝込んでいたのだった。
昨日の学校の帰りに雨に降られ、今日の朝には鼻水が止まらなくなっていた。

風邪を引くなんて不良らしくない、と悶々としていると、夏目が枕元に立った気配がした。

だるい体で寝返りをうち、薄目を開ける。

案の定、そこには湯気の立つお粥とおさじを持って、渡狸を覗き込む夏目がいた。


「お粥。食べれる?」


そう問い掛けてくる夏目に、ゆるゆると首を振った。

一瞬困ったような表情をした夏目が、お粥をサイドテーブルに置く。

そして渡狸の額に手を当てた。
ひやりとした冷たさが心地好い。


「…やっぱり、熱高いね…」


そう言って、夏目は眉をひそめる。


「食欲なくても、何か食べないともたないよ?」


そう言った彼の表情には、心配がありありと表れていて。
渡狸は頷くしかなかった。

ふらつく体を夏目に支えられ、なんとか起き上がる。


「はい、あーん」


そして夏目は、少し冷めてしまったお粥を掬って、渡狸に食べさせようとする。


「じ、自分で食べる!」

「そんなにふらふらしてるのに?」


任せておいた方が楽だと思うよ、と微笑を浮かべられ、為す術もなく渡狸は口を開けた。





あまのじゃく



(いつもは)
(からかったりしてるけど)
(ほんとは心配なんだよ?)




あとがき...

アンケートで渡狸受けが人気だったので、挑戦してみました!
長くなりそうなので、二つにわけます。
風邪ネタおいしいです(´∀`)

11.8/19 ナオ



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