「オズ!」
ギルバートは、勢いよくドアを開けた。
「あ、ギル…しーっ」
椅子に座っていたオズが、静かにしてというジェスチャーをした。
「?どうしたんだ?」
思わず小声になる。
「ほら…」
オズはソファーの方を指差した。
オズの指差した方を見ると、誰かがソファーの半分ほどを占領しているのが見えた。
ブレイクだ。座っているのか横になっているのか分からない、中途半端な体勢だ。
その瞳は閉じられている。
「寝てるのか?」
ブレイクが人前で眠っていることを珍しく感じて、オズに訊ねた。
「うん」
オズはにっこりと笑って即答した。
小さく上下する細い肩を眺め、言う。
「オレが読書しようと思ってここに来たときには、もう寝ちゃってた」
オズは新しいおもちゃを見つけた子供のようなキラキラした目で言葉を続ける。
「ブレイクが寝てるとこなんて、めったに見られないだろ?だからたくさん見とこうと思って」
そう言って、ブレイクの方に目をやる。
ギルバートもつられてそちらに目をやった。2人で、その無防備な寝顔を眺める。
不意に、ブレイクが小さくくしゃみをした。
そういえば、少し寒そうだな。
ギルバートは毛布を持ってきて、ブレイクにかけた。
再び座って、ブレイクを眺める。
あいかわらず顔色が悪いな、とかそんなことを考えているうちに、カクンとオズがもたれかかってきた。
「…オズ?」
返事がない。眠ってしまったようだ。
呼びかけても起きる気配がない。
「仕方ないな…」
ギルバートは笑った。
それにしても静かだな…。
いつも賑やかな2人が寝てると、こっちまで眠く…。
(ガチャ)
シャロンは、本を読もうと思い、ある部屋の扉を開けた。
入った瞬間目を見張る。
「…あらあら…まあまあ」
右には2人仲良く座ったオズとギルバートが。
左には中途半端にソファーに体を預けたブレイクが。
3人とも、穏やかな寝息をたてていた。
シャロンはクスリと笑う。「みなさん…かわいいですわ」
お疲れなのかしら?
笑みを浮かべたまま、シャロンは部屋をあとにした。ブレイクが目を覚ますと、最後に時計を見てから、三時間以上が経過していた。
時間を無駄にしてしまったことを悔やみながら身体を起こすと、毛布がバサリと落ちた。
誰がかけてくれたのだろうか。
立ち上がると、オズとギルバートが座ったまま2人仲良く眠っていた。
どちらかが毛布をかけてくれたのだろう。
「2人とも、そんなとこで寝てると風邪ひいちゃいマスヨ〜?」
ブレイクは床に落ちた毛布を拾い上げ、2人にそれをかけた。
「さて、三時間も寝ちゃいましたヨー」
そう言いながら、部屋をあとにした。
「あれ〜ギルー?」
オズは目を開けて初めて、自分が眠っていたことに気づく。
隣を見ると、ギルバートも眠っていた。
「ブレイク?」
ソファーの方を見ると、ブレイクの姿はなかった。
よく見ると、ギルバートがさっきブレイクにかけた毛布が今度は自分たちにかけられている。
きっとブレイクがかけてくれたのだろう。
(あー…もっとブレイクの寝顔見たかったなー)
オズは一人、寝てしまったことを後悔していた。
連鎖