「……げ」
たまたま街中を歩いていたときに、目に入った白。
自分の見間違いでないことがわかると、思わずため息をついた。
「待てよ」
すぐさま踵を返そうとした途端、後ろから聞こえてきた声に舌打ちをする。
しかたなく振り返ると、予想通りの、擬音をつけるのならにやにやという表現がぴったりな表情をしたバジルが立っていた。
「よぉ、背信の葬儀屋さん?」
自分の通り名を呼ばれ、ウォルターは再びため息をつく。
「よぉ、白いマフィア…バジル」
嫌みも込めて奴の名前を呼ぶと、彼は面白そうに眉を上げた。
それから彼は思い出したようにポケットの中を探り始める。
「これやるよ」
そう言って投げられたのは、一輪の赤い花。
「椿……?」
思わず受け取ってしまった花から目をあげる頃には、すでにバジルの姿は消えていて。
「何なんだ……?」
あとには、わけが分からず首を捻るウォルターだけが残されていた。
Camellia
(なあ)
(知ってるか?)
(椿の花言葉)