才蔵、と伊佐那海が楽しげに俺を呼ぶ。
その隣には、やけに大きい竹の木が置かれていた。
その竹に飾られているのは、いろとりどりの短冊。
そう、今日は七夕だった。
「才蔵もはやく願いごと書いてよー!」
伊佐那海が青い短冊を寄越してくる。
思わず受け取ってはみたものの、願いなんて急に言われても思いつかない。
試しに既に飾られている他の短冊に目を通してみた。
"才蔵と毎日遊びたい 鎌之介
"殿の女癖の悪さが直りますように 六郎"
"伊佐那海は誰にもやらん!! 清海"
「………」
彼ららしいといえば聞こえはいいが、全くもって参考にならない。
少しでも彼らを参考にしようと思った自分の浅はかさに嘆息し、縁側に座り直した。
どうしようか、とぼんやりと思いを巡らせる。
そもそも、今日は織姫と彦星が1年に1度逢える日だったはずだ。
上を見上げれば、蒼い夜空に星が煌々と輝いていた。
彼らは今、1年ぶりの再会を喜んでいるのだろうか。
上田に来るまでは、七夕なんていう行事を祝ったことも、深く考えたこともなかった。
けれど、そんな子供みたいなことが今は楽しいと思う。
そして俺は、思いついた願いを短冊に書き留めた。
七夕の夜は
(来年も)
(こうして過ごすことが
(できますように)