才蔵、と伊佐那海が楽しげに俺を呼ぶ。

その隣には、やけに大きい竹の木が置かれていた。
その竹に飾られているのは、いろとりどりの短冊。


そう、今日は七夕だった。


「才蔵もはやく願いごと書いてよー!」

伊佐那海が青い短冊を寄越してくる。

思わず受け取ってはみたものの、願いなんて急に言われても思いつかない。

試しに既に飾られている他の短冊に目を通してみた。


"才蔵と毎日遊びたい 鎌之介

"殿の女癖の悪さが直りますように 六郎"

"伊佐那海は誰にもやらん!! 清海"


「………」


彼ららしいといえば聞こえはいいが、全くもって参考にならない。

少しでも彼らを参考にしようと思った自分の浅はかさに嘆息し、縁側に座り直した。
どうしようか、とぼんやりと思いを巡らせる。

そもそも、今日は織姫と彦星が1年に1度逢える日だったはずだ。
上を見上げれば、蒼い夜空に星が煌々と輝いていた。
彼らは今、1年ぶりの再会を喜んでいるのだろうか。


上田に来るまでは、七夕なんていう行事を祝ったことも、深く考えたこともなかった。


けれど、そんな子供みたいなことが今は楽しいと思う。


そして俺は、思いついた願いを短冊に書き留めた。



七夕の夜は



(来年も)
(こうして過ごすことが
(できますように)




あとがき...

ロマンチストな才蔵さん(笑)
みんなのお願いごとを考えるのが楽しかったです。
七夕の日に書いて見事に1ヶ月放置!
でも大丈夫、わたしが住んでいるところの七夕は8月7日です。(ほんとうに)


11.8/3 ナオ



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