幸運の前髪を掴め | ナノ
「まーさちゃんっ」
遠慮無しに開かれたドアと共にズカズカと慣れたように足を踏み入れる幼馴染を横目に、瞬時にベッド下へと投げ入れたブツに意識を集中させた。
自分の反射神経がここまで発達したのもこのバカ面下げた幼馴染のおかげとも言えるだろう。
何度指摘しても治らない登場の仕方にこちらも、それ相応の対応術を身につけざる負えなかった。

「なんだ」
至ってクールに返すことにも慣れたものだ。
「遊ぼう!」
くるりと身体を弥生へと向けると、お世辞にも可愛いとは言えない笑顔を満面に貼り付けて、仁王立ちしている。
顔に散らばるソバカス、乱れた髪、華奢な体と170センチに満たない身長がやたらと弥生を幼く見せた。
「見てわからないか?俺は勉強中だ」
「えー!あとどれくらいかかる?」
不満そうに尖らせた口はかさついていて、よく皮を剥いては赤く痛々しくなり、度々泣きついてくることもある。弥生には薬用リップクリームを渡しているはずだが、どうやら活用していないようだった。

「あとも何もない。来週は期末テストだろ、お前も勉強しろ」
「うっまだ来週だよ〜。まさちゃん構ってくれないと退屈だなぁ」
そう言って、俺の首元に絡みついてくる。
「こらやめろ。テスト勉強のお供ならいいぞ」
「うえ〜。」
じゃあわからないとこは教えてねと、持っていたカバンから勉強道具一式を取り出した。
「持ってきてるじゃないか」
「ふふん!一応ね!」
「得意気にするんじゃない」


続く
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