【アラニェ / Alanye】



[物語]

───1.
狂った彼女は笑いながら、地を這い逃げる。岩肌にしっかりと指の腹を這わせ続けたため、爪は赤く紅く傷ついている。どこで間違えてしまったのか。どこで違えてしまったのか。どこで怒りを買ってしまったのか。彼は必ずアラニェを殺しに来る。まだ死にたくない、その想いが力に変わる。

───2.
冷たく湿った洞窟の中でアラニェは息を潜ませる。雫が一滴、また一滴と滴り落ちる。獲物を見据え、狙いを定める。狩人どもは自らが獲物になることを知らない。アラニェの毒牙が静かに突き立てられ、体を震わせ、息を絶えさせた。これ以降アラニェに関する記録は途絶えることとなる。彼から逃げ果せたアラニェは暗闇の中でクスクスと笑った。

───3.
人ならざりし者アラニェ。かつてエーネンゲルの舘に住まいし織師だった。主のために衣を仕立てる云わば使用人の一人だった。その反面、彼女はパーリシェの一神でもあった。世の数式を捻じ曲げる、あまりにも強大な力を彼女は持っていた。しかし彼女は知らない。そのような力、必要ないのだから。





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