【クトゥ / Kuto】



[物語]
───1.
美しい水を称える大河ユーゲンレディア。ガイアの心臓とも言われるこの大河に、一つの神が生まれ落ちた。それがクトゥである。クトゥは見渡す限りの青と緑、そして父なる光を初めて映した。これこそがクトゥの記憶の始まりであり、生まれ落ちた意味を知った瞬間だった。

───2.
クトゥはあまりにも弱く、あまりにも不完全な存在だった。故に対の神の力を必要とした。互いの力を衝突させることで雨を齎し、光を齎した。大樹の力が及ばぬ範囲を守護し、また新たな命を育んだ。それらを慈しみ、また守るために幾つもの眷属を生み出した。一つは慈雨を齎す虫を。一つは恵みを与える鳥を、一つは居を与える亀を。そして外敵から守るための力を。そしてクトゥは永い眠りについた。再び恵みを与えるために。

───3.
何も無い。何も残っていない。クトゥが目覚めた時、クトゥが知っているものは何も残されていなかった。クトゥが造ったものも全て消え去り、大河の青は黒く染まっていた。代わりに闇が蔓延り、代わりに死が蔓延り、代わりに"始"が蔓延っていた。故にクトゥは代わりに滅亡を与え、代わりに混沌を与え、代わりに終わりを与えた。そこに得たのはかつての美しい世界ではなく、最早死ぬ運命を与えられた世界だった。





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