【ナミュグゥト / Namuguto】



[物語]

───1.
かの貴婦人に造られし虫、ナミュグゥト。全てのナミュブアンを統べし者である。彼の役目は荒れた砂漠に慈雨をもたらすことであるが、それは日常生活の一部と化していた。昼はぬくぬくと日差しを浴びながら寝、夜に獲物を求めて徘徊する。深夜になると綺麗な夜空を眺め、月を崇める。その際に、体内で水を生成し、荒れた砂漠に与える。これを毎日繰り返す。しかし、その効果は全くない。

───2.
ナミュグゥトは砂漠は良いところだと、今日も思いながらぬくぬくと日向ぼっこする。人は砂漠を嫌うが、彼にとっては最高の土地であった。人間はあまり寄り付かないため、仲間を無闇に殺されることはない。現地人とは友達になれたし、彼らの話は面白い。お日様の日差しはちょうどよく、夜は夜で適度に涼しい。こんな素晴らしい場所は他にはないと思いながら、今日も仲間と昼寝する。

───3.
今日も暖かい。しかし、いつもより砂漠が潤っている。真っ青な水が染み渡り、砂を染め上げる。砂漠の砂は仲間を隠し、否、命をも攫う。ナミュグゥトは死神の鎌が刺さった体を引きずり、同様に砂漠に恵みを齎す。ついてくる仲間はもういない。息絶える仲間ももういない。恵みを齎すものももういない。ならば長たるナミュグゥトが果たすことは一つ。己の命と引き換えに、仲間に恵みを齎すことである。彼は空を見上げる。今日はとても寒い。


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テーマ「人外ファンタジー」
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