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「死んでいい命なんてないんだ。少しでも可能性があるなら僕は助けたい。ただそれだけなんです」


ふわりとした亜麻色の髪を揺らしながら彼は言った。

甘い。反吐が出るほど甘い。到底忍を目指している者の言う言葉ではない。敵味方関係なく助けるなんて、忍にしては優しすぎるのだ。

右腕の包帯を巻き直してもらいながら私はため息を吐く。すると目の前の少年は困ったような笑みを浮かべた。


「そんなあからさまにため息を吐かなくても…」
「忍に向いてないよね、善法寺くんって」
「それ名前さんのところの雑渡さんにも言われました」


言うだろうなぁ組頭なら。というかうちの組頭だけではなく、プロとして活動している忍であるならば皆口を揃えて言うだろうに。

綺麗に巻かれていく包帯を眺めれば、じわりと赤くにじむ。思ったよりも傷は深かったようだ。


「命はさ」
「…はい」
「遅かれ早かれいつかは消えていく。葉の上にある露が蒸発して消えるように儚く」
「はい」
「だから私は殺すことを躊躇わない。死んでいく命を救おうだなんて思わないし、そもそもその考えすら理解が出来ない。助けたら最後そいつが治って反撃してきたら自分がやられる」
「……」
「もう一度聞く。味方を助けるのは分かる。けれども敵を助けるのに利点はない。それなのに何故善法寺くんは助ける?」


真っ直ぐに見据えて彼に今一度問えば、暫くこちらを見つめたのちゆるりと微笑んだ。

包帯を巻いていた手が腕を滑り大きな手が私の手を包んだ。


「利点とか…そういうのは二の次なんです。自己満足と言われてもいい。ただ助けたいから助けるだけです」
「…」


なんの迷いもなんの揺らぎも見えない。

…本当に甘いな、この子は。

それはこの環境の所為なのか。はたまた善法寺くんの人柄か。きっとどちらもなのだろう。

私も忍術学園に通っていれば、そう思えるようになったのだろうか。…いや、きっとないんだろうな。


「ほんっと向いてない」
「そんな繰り返さなくても」
「しかも持ち前の不運と合わせて早死にしそう」
「名前さんひどい」
「…仕方ないから守ってあげるよ」
「え」


命を儚いものだと分かっていながら、彼は可能性があるならその命を救う。

きっと彼は間接的には殺せるかもしれないが、直接的に殺すことは出来ないだろう。優しすぎるのだ。

ならば私が少しでも傷付かないように、手当ての礼でもしてあげようじゃないか。組頭のように。

目を真ん丸に見開く彼に私はにっこりと笑った。







う手あればる手あり



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ヒロインはタソガレドキのくのいちで、伊作たちより二つぐらい年上。

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