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『なぁ、伊作』

「何?名前」

『変なこと聞いていいか?』

「いいよ。言ってごらん」

『人は何で生きるんだ?』

私がそう言うと伊作は一瞬きょとんとしてから笑った
何が可笑しいんだろう

「…気になる?」

『あぁ。伊作は気にならないのか?』

「僕はあまり気にならないかなぁ。でもさ、確認する方法が一つだけあるよ」

『どんな方法だ?』

そう言った私の体は倒れた。否、倒された
上には伊作がいて、伊作が私を押し倒したことがわかる
顔には笑顔が張り付いている
幼い子が蟻を踏み潰すような純粋な笑顔だ
伊作は笑顔を張り付けたまま、口を開いた

「死ねばわかるよ」

『死ねば?』

「うん。死んで神様に聞けばわかるよ」

そう言いながら私の首を絞め始めた
私を殺すつもりか

「ねぇ、名前」

『っ、だ』

「僕も変なこと言っていい?」

『い、よ』

首を絞められているのに、何でいつもと変わらない口調で会話しているんだろう

「僕さ、名前が誰かと話すのが許せないんだ」

『へ、ぇ』

伊作の手は容赦なく締め付けてくる

「名前が誰かに笑いかけるのも許せない」

「名前が僕以外に取る行動の全てが許せない」

だったら言えばよかったのに
そう言いたかったけど声が出ない

「だからさ、」

「最後は僕だけを見て逝って?」

疑問系で言いながらも、容赦なく首を締める
私の答えは聞かないってか
まぁいいや
伊作に殺されるならな

「何で笑ってるの?」

お前に殺されるのが嬉しいからだよ
ありがとよ伊作
私は死後の世界を信じてないけど、死んでやるよ
死んだらお前の背後に付きまとってやるから覚悟しとけ

(私は生を否定する)

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