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糸で繋がっていると思っていた。

運命ってあるから。
お母さんから産まれたこと
お父さんがお父さんだってこと
私があの人に恋をしてしまったこと

それは変えられない事実
運命、運命。


「名前」

「なに?兵助」

「俺、お前嫌いなんだ」

「嫌いなのに付き合ってるの?面白いね」

「ああ。運命感じるからな」

「運命?私のこと好きじゃないのに?」

「なんか糸で繋がっているような気がするんだ」


糸?
糸なんかじゃない
そうでしょ


「つくづく面白いこと言うね」

「こんなこと言われて付き合ってるお前も十分おかしいけどな」

「私は兵助とちがって兵助のこと好きだしね」

「変なやつだな、お前も」

「ふふ。
 そうかも」


ことん、と兵助によりかかる


なんだろうね、
離れようにも離れられないこの感覚
よりかかると、さらに強さを増す
この異常な感覚


糸なんかじゃない
そんな柔なもんじゃない
縛りつけられてる
なにか、強いもので


わかる?この感覚
ううん、分からなくてもいい。
ね、兵助
私たち、馬鹿ね



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