許ない ガラリ、 忍たま長屋の六年は組の戸がなんの前触れもなく開けられ、何だ誰だと部屋の住人である善法寺と食満が目を向ければ一人のくのたまが佇んでいた。 「善法寺君はいるかね!」 視認すると同時に溜息をついた食満は善法寺の方を見た。 「伊作ー、電波女のご指名だぞー」 分かっているよと答えながら善法寺は未だ入口に佇むくのたまに向き直った。 「名字さん、突然どうしたの?忍たま長屋にくのたまの君がいるのが先生に見つかると拙いんじゃないかな、」 「馬鹿だな善法寺君、君は馬鹿だッ!私がこの学園に何年いると思うんだね。君と同じ六年だぞ。成績の悪い君が知っていて、成績の良い私が知らないことなど何も無いッ。分かったら座布団とお茶を用意したまえ、それが客人への礼儀というものだ!」 始まった。 名字のこの語り口は日常なので、善法寺はそうだねと返すと部屋に名字を入れ、言われた通り座布団と薬草茶をすすめた。きちんと座布団に正座をして出されたお茶を飲む名字に、今日は何の用かと善法寺が問うと名字は湯呑みを置いた。 「安心したまえ!今日から善法寺君、君のことは私が守ってやろうッ」 「ごめん。突拍子無さ過ぎて分からないから一から説明してくれるかな?」 「君はこのままでは死んでしまう。だから私が守ると言っているのだよ」 「え、何で僕死ぬ話になってるの?一応今のところ無病息災なんだけど」 「簡単なことだよ。君が不運で成績が悪いということは猪でも知っている!逆に私が幸運で成績が良いということは虫でも知っている!その君が私よりも死亡率が高いことは明白だッ」 「死亡率とか、嫌なこと言わないでくれよ」 「何故かね。事実から目を逸らすことほど愚かなことは無いのだよ?君が明日にでもバナナの皮で滑って頭部強打の後死ぬ確率はとても高いのだ!」 「いくら僕でもそんなまぬけな死に方はしないよ」 「そんなこと分からないだろう。神が君の死因をバナナの皮で滑って頭部強打の後死亡にしたらその通りになるのだ」 「それなんてデスノートだい?」 「そんな不運で非力で成績も悪く、ヘンな包帯忍者にストーカーされ風前の灯の善法寺君を私が守るのだ!」 「いくらなんでもそれは僕、男として頼りなさすぎじゃないかな。ていうか包帯忍者って、」 「君がバナナで滑った時は転ばないよう支えてやるし、蛸壺に落ちる前に腕を引っ張ってやる。試験問題の答えも教えるし、ストーカーのことは抓って追い返してやるッ」 そこまで名字と善法寺の会話を聞いていた食満が衝立の向こうから顔を出して、冗談まじりに名字に問いかけた。 「神様が伊作の死因決めたらどうするんだよ?」 「そんな本当に存在するかしないかよく分からないヤツが決めたことなど変えてくれる!」 相手は神様でしょう?と苦笑する善法寺に名字は鼻で笑うと言い放った。 「私は神とかいうヤツよりも偉いからなッ。宇宙の法則というやつなのだよ、善法寺君」 とんだ力関係だと二人が呆気にとられていると、突然善法寺に名字が抱きついた。とんだ奇行だ。 「ど、どうしたの」 「善法寺君、頼りない君と頼れる私がめおとになると人類が幸せになるのは自然の摂理だッ。私の所に輿入れしなさい!」 超展開。しかし善法寺は逡巡すると縦に頷き返した。 私の話をちゃんと聞いてくれる時点で、君が私を好きなことなど最初から分かりきったことなのだよ、善法寺君! ───── 素敵な企画に参加させていただきありがとうございました! オソマツ! |