ひょろひょろと伸びた不健康な手足がおれに絡み付いて、その所為で、なんだか、体温が一・二度も下がってしまったような気さえしたのだった。
内側の骨は、表面を覆うだけの薄っぺらな皮を押し上げていた。なによりこいつには、やわらかい肉がない。シルエットはそのまま骨格標本だった。聞くところによると、どうやらこいつは、拒食症という病気らしい。もう何日も食べていない。不自然にブラウンが交った髪だって人毛とは思えないほどに痛んでいる。おれが無責任に放り投げた一言で、こいつはこんなにも簡単に崩れてしまうのだ。
支配する欲と独占する欲が、完全に満たされているという感覚。おれが死ねと言えば、五十階からでも躊躇せずに飛び降りるし、先端までを灯油に浸して火を付けるし、刃物だって当たり前に心臓へ突き刺すだろう。それが、おれにこれ以上ないほどの安らぎを与えてくれた。
人差し指で操った手足が、おれの身体に絡み付いてから、体温は一体何度下がってしまったのか。今日もまた、冷えきったこころを寄せ合って、なにも生まれない夜を共に越える。

(脱ぎ捨てられた白いTシャツに、知らない言葉が並んでいる。その隣で安いライトが、ごみだらけの部屋を照らしている。明日は部屋の掃除でもしよう。それにしても、こいつの抱き心地は最悪だ。)



一緒にだめになろう/糖衣錠提出
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