TREASURE | ナノ


体温(璃優丸様より/アキケイ)※性描写有



「わぁー!いい眺め」
久しぶりの連休、たまには二人でゆっくり出かけてみるのもいいかも知れない。
そんなわけで、やって来たのが、地元ではそこそこ名の知れた温泉旅館。
紅葉が舞い落ちる季節、露天風呂から見える景色は美しく、鮮やかに彩られていた。

「あぁ、綺麗だな」
はしゃぐケイスケに、相づちを打つアキラ。
乳白色の湯が、肌をしっとりとさせる。
心地好い温度に身を委ねていると、いつもの様に、ケイスケがアキラの隣にすり寄ってきた。
「えへへ」
「あのな…、ここに居るのは俺たちだけじゃないんだぞ!わかったら離れろ」
「えーっ!?でも、隣に座ってくっつくくらい…」
「………見られたら恥ずかしいだろ」
所構わずイチャつきたがるケイスケに背を向けると、一瞬諦めたのか大人しくなったが、アキラの耳元で、ボソリと小さな声で囁いた。
「じゃあ、部屋に戻ってから」
「!?」
思わず、アキラが顔を赤くしながら振り返ると、ケイスケは悪びれも無く、嬉しそうに微笑んでいた。
あまりにも、幸せそうな表情をしているものだから、アキラはすっかり言い返すタイミングを失ってしまっていた。



部屋で寛いでいると、夕食が運ばれてきた。
食欲を刺激する豪華な食事に、腹の虫が鳴る。
「凄い!美味しそう」
「そうだな」
以前なら、胃を満たしてくれて、嫌いな味でさえなければと、たいして食事に興味も無かったアキラが、素直に目の前のご馳走に少しばかり瞳を輝かせていた。
そういったアキラの変化を、ケイスケは嬉しく思う。
自分と一緒に居ることで、アキラが少しでも笑ってくれるなら、それがケイスケにとっての一番の幸福だった。



食事と供に運ばれてきたご当地産の日本酒。
おちょこに熱燗を注いでいく。
アキラもケイスケも、普段は殆ど呑まない。
二人とも酒に強い方ではないが、せっかくなので呑んでみることにする。
「アキラ、乾杯」
「ああ、乾杯」
まずは一口。
まろやかな風味が舌に広がる。
思ったより呑みやすく、するすると喉に入っていく。
「ん、美味しい。呑み過ぎないよう、気をつけなきゃな………って、え?アキラ!?」
アキラの手に持たれたおちょこは、既に空っぽになっていた。
自分の分をテーブルに置き、俯いたアキラの顔を、そっと覗き込んでみる。
潤んだ目元と上気した頬は、誘っているかの様に艶めかしい。
浴衣の裾が捲れ、白く滑らかな腿をちら付かせる。
「アアアアキラ、どうしちゃったの?」
「ケイスケ……」
指先で唇を辿ると、アキラはケイスケに体重をかけた状態で倒れ込んだ。
「え、わっ、ちょっと待って!!」
勢い良くバランスを崩したと思ったら、ちょうどケイスケの上に、アキラが跨がる体勢になっていた。
おちょこが、アキラの手から滑り落ち、空っぽで良かったと地味に安堵する。
「………暑い」
アキラが、自分の浴衣の紐を解き始める。
これはまさか、アキラの方から誘ってるのだろうか!?
ここまで積極的なアキラは、見たことがない。
自分に跨がり、乱れる姿を想像するだけで、いとも簡単にケイスケの理性は崩れさる。
「アキ……痛ててっ!?」
胸元に手を伸ばそうとしたら、パチンと払い除けられた。
「アキラァ…、酷い……」
「五月蝿い。おまえは黙ってろ」
「そんなぁ……」
渋々と手を引っ込めつつ、それでも、たまにはアキラにリードされるのもいいかななんて、大人しく身を任せることにした。



程好く日焼けした肌に、唇を落としていく。
自分よりも少し厚い胸板を撫で回した後、桜色の乳首に口付ける。
ケイスケの身体が、一瞬ビクリと跳ねる。
唇で突起を挟んだまま、舌先で突ついてやると、艶を帯びたか細い声が漏れた。
「あ……、ん…」
指先で、もう片方の乳首を摘まんで、優しく擦るように愛撫していく。
「っ、はぁ……、ア、キラ」
甘く痺れるような快感に、ケイスケの表情は蕩けている。
唇を離し、チラリと伺えば、既に硬くなり始めた性器が、下着の中で窮屈そうにしていた。
下着に手をかけ、ゆっくりと脱がせていく。
すべて取り去り、見慣れたものが露になると、おずおずと口に含んだ。
生暖かい感触に、ケイスケの身体が震える。
「ッ…、あ、アキラは、そんな、こと…しなくて、も、」
ケイスケの言葉を無視して、舌先で先端を愛撫する。
鈴口から溢れでる、先走りと唾液が混ざり合い、滴り落ちる。
「ン、あ、はぁ、」
行為自体は拙いものだが、アキラに口淫を施されているという事実だけで、ケイスケは達してしまいそうになる。
熱を帯び、更に血流が増した性器を咥え込むと、トントンと肩を叩かれた。
「ん……、も、もう、いいか、ら…」
咥えたまま、上目遣いで見上げれば、潤んだ瞳と紅潮した頬で訴えるケイスケの姿に、アキラの雄としての本能が呼び覚まされた。


性器から顔を離し、指先でケイスケの秘部を辿る。
瞬間、驚いた様な声を上げて、両眼を見開いた。
「ヒェッ!!!な、な、何っ!?アキラ」
ほんの少しの沈黙の後、アキラは口を開く。
「………たまには、代われ!」
「…………!!?」
代われというのは、つまりは、そういうことなのだろうか?
考えている間もなく、アキラの骨張った指が、ケイスケの中へと浸入してくる。
「う……!」
慣れない異物感に、小さく呻く。
戸惑うケイスケに、アキラは躊躇いがちに問い掛ける。
「イヤ、か…?」
別にイヤではない。
寧ろ、アキラに触れたいと思って貰えるなど、幸せなことこの上無い。
それに、ほんの数回とはいえ、ケイスケはアキラに抱かれたこともある。
毎晩のように盛っているケイスケと違って、極たまに、アキラがしたくなったときだけであるが。
ただ、今回は心の準備が出来ていなかったというか、痴女のごとく、自ら跨がって乱れるアキラを想像してしまっていた。
また、アキラも最初はそのつもりだった。
さっきのケイスケの反応が、引き金にさえならなければ。
「イヤ、な、わけ無い…けど………」
「けど、何だ?」
「その………」
もごもごと応え辛そうにしていると、アキラが指を動かし始めた。
「イヤじゃないなら、いいだろう」
「………ん、っ」
ぐるりと円を描くように、体内を掻き混ぜる。
柔らかい腸壁を指先で引っ掻く度、ケイスケの口から、悲鳴にも似た喘ぎ声が漏れた。
「あ、アキラ、んう、ッは、あぁ……、」
いつの間にか、増やされた指が、敏感な場所を掠めると、強請るように腰が揺れる。
ついさっきまで、アキラを抱きたいと思っていたのに。
今は、こんなにもアキラが欲しくて堪らない。
本当はどちらでも構わないのだ。
アキラと居られるなら。


「アキ、ラ……、早く、」
「まだ、きついだろ…?」
「も、う、大丈夫、だか、ら、ァ…」
指を引き抜き、まだ解れきっていない入口に、アキラは自信を宛がう。
なるべく傷付けないよう、痛くないように、ゆっくりと腰を押し進めていく。
「っ、く……、ン、」
まだ受け入れることに慣れていないせいか、ケイスケの身体は、無意識に強張る。
「大丈夫…か…?」
「あ…ふ、ん……だ、いじょ…ぶ、だか、ら…」
額に汗を滲ませ、言葉とは裏腹に、痛みに耐えようとする、ケイスケの頬に口付ける。
多少、呼吸が整ってきたのを確認すると、今度は唇にキスをする。
どちらからともなく、舌を絡ませ、求め合う。
やがて、唇が離れた後、アキラは自らのものをすべてを呑み込ませた。


「………動くぞ」
「あ…、うん……」
お互い、抱き合うようにして、体温を確かめると、ゆっくり腰を動かし始めた。
「ふ、ぁ……っ、ン、」
「ッ、は、」
肉壁を擦られるたび、ケイスケの口から、甘い嬌声が漏れる。
反り返るほど勃ち上がった性器は、解放を待ち望んでいた。
突き上げるたびに、収縮を繰り返すその場所は、アキラのもの柔らかく締め付け、追い上げる。
「あ、ふぅ……、ッ、あ、アキラァ、もう、イッちゃ、や、ァ………!!!」
ケイスケが、勢い良く精を放つのと同時に、絶頂を迎えたアキラが、体内で射精する。
「っ、……ん、く……!!」
最奥に注がれるのを感じながら、ケイスケは、ぐったりとしながら微笑んだ。
すべてを吐き出し、自分の上に倒れ込んでくる、愛しい人の髪を撫でながら。





「アキラ、おはよう」
「ん……ケイスケ……?」
昨夜は、あのまま眠ってしまったらしい。
目を覚ましたアキラが、慌ててケイスケに謝る。
「悪い!あのまま、寝てしまってた…。おまえ、身体は大丈夫なのか?」
あのまま…というのは、ロクに後処理もせずに、寝てしまったということなのだろう。
「平気。俺、アキラになら何されても嬉しいから」
「馬鹿…。そういう問題じゃないだろ?」
「んー、でも本当のことだからさ!それはそうと、アキラも体調とか大丈夫?かなり酔ってたけど、二日酔いとかなってない!?」
「!…………いや…、大丈夫だ……。もう抜けた……」
「そっか、良かった。じゃあ、朝風呂行こっか」
「ああ…」

本当は、途中からすっかり酒なんて抜けてたんだって。
アキラは、心の内にしまっておくことにした。





End

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