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綺麗な星空の夜のこと

 リンケイのIFものです。
 アキラはトシマで、ケイスケを守って死んでしまいました。



「あった、あった!このへんなら、きれいに見える」
「ありがとう、リン」
 少し寒い秋の季節のことだった。
 ここ日興連の地はCFCよりも温かいとはいえ、この季節になると少し冷える。
 ケイスケは、アキラが着ていた形と同じジャケットを着ていた。自分は相変わらず弱いままだけど、少しだけ強くなれそうな、そんな気がする。
 黒革のジャケットはリンにあまり似合わないと笑われたが、これを着ているとアキラを思い出せそうな気がする。
 
「えっと、北極星はこのへんだとすると…… ……」
「ケイスケ、星座、よく知ってるね」
「小さい頃、よく本を読んだんだ」
 この空は、昔にアキラと共に見た、星空に似ていた。
「きれいでしょ、今日は晴れているから特に見えるよ」
「うん」
 まるで宝石箱のように、星たちは輝いていた。
 
「俺は、こんな空をアキラと一緒に見ていた。なにも言葉は返さないかわりに、ずっと見ていたんだ、アキラも」
「俺も!カズイとこんな空を、ずっと見ていたんだ」

 アキラと違って、リンは饒舌だ。
 リンの頭は柔らかい。自分が気がつかなかったことにすぐ気づき、要領の悪い自分を、気遣ってくれる。
 それにリンと話していると、なんだか心がほぐれてくるのだ。
 言葉のキャッチボールがうまく、不器用な自分の言葉でもかなり上手に返してくれる。
 時々失礼な物言いをすることもあるけれど、遠慮のない物言いはかえってケイスケの心をほぐれさせていた。
 自分よりも、リンははるかに大人っぽい。
 出会ったときから、少女のような見た目と人なつっこい態度に反して、その精神は大人のそれと変わりはないようだった。
 それは相当な人生を送っていたからということが、今ならわかる。
 今は見た目まで大人びてきていて、外国人と見間違えるような金髪青眼の青年に成長していた。
 自分はというと……リンからはちょっと男らしくなったといわれたが、やっぱりあまり変わっていない気がする。


 こんな風に、アキラにたくさん聞くことができたのなら。
 アキラと臆せずに、話せていたのなら。
 ――もっと、アキラのことを、知りたかった。


「……遠いな」
 ケイスケは空に手を伸ばしたが、手が星に届くことはない。
「……この星の中に、アキラもいるかな?」
「どうかな?でも、いたらいいよね。見守ってくれてるってことだよね……カズイも、いるかな」
「いるといいね、君の大切な人も」
「うん」

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