微笑みの十字架
1
「アキラー!仕事終わった?」
「ああ」
「今日は早く帰れるな。たまには外食でもするか」
今日は俺もお前も早番だった。朝が早くてキツい分、早く帰ることができる。
昔は日付が変わってから寝て、日が真上に登ってから起きるという、今考えてみれば不健康極まりない生活を送っていたと思う。
なんとなくだるい日も多かった。
お前と共に暮らし、規則正しい生活の大切さが身に染みる。
初めは窮屈で大変だと思っていた時期もあったが、そのおかげで体調もよくなったような気がする。
朝早く起きて、仕事をして、早めに寝る。
健康的な生活とはこのようなことを指すだろうか。そういう生活は悪くない。
それに俺には昔とは違い、早く家に帰りたい理由があった。
「いや、今日は家でオムライスを食べたい気分だ」
――随分なわがままを言ってしまった自分に驚く。昔はこんなこと、言わなかったのに。
お前が外食を提案したのは、仕事で疲れていて、料理をする気力もないからかもしれない。
「疲れてるんだったら……別に」
「……嬉しい」
幸せそのもののお前の顔が返ってきた。
「アキラに頼まれると、疲れなんて飛ぶよ!
早く帰って、オムライスを食べよう、アキラ!」
そんなに嬉しそうな顔を向けられると、恥ずかしくて仕方がない。
お前は俺に何かしてあげられるということが、とても嬉しいらしい。
俺への想いが満ち溢れた、どこか奥ゆかしい微笑みがそこにあった。
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