そばにいたい
ケイスケ独白のケイ→アキ。
トシマで。
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1
いつから俺は、「アキラのそばにいたいから」と
素直に言い出せなくなってしまったのだろう。
アキラを追いかけて、この危険な犯罪都市『トシマ』までついてくるなんて、
俺はとても無茶なことをしたと思っている。
でも、俺が死ぬことよりもアキラが俺のそばからいなくなる方が、耐えられなかった。
アキラが自分の知らないところで、一人で死んでいくのは、
もっと耐えられなかった。
――助けになりたい。守りたい。
この危険な都市トシマでは何かしら理由をつけなければ、
俺はアキラのそばにいることさえ許されないと思った。
どんなに呆れられていてもいい。俺は弱いし、力もない。
せめて手助けできることがあればと思ったんだけど、案の定呆れられた。
それでもいい。俺にはアキラのそばにいる理由が必要だったのだから。
「とっととタグを集めて、王とやらに勝ってくればいいだけだ」とアキラは言っていた。
自分の命に関わることなのに、何事でもないような顔で言うのが俺には耐えられなかった。 アキラがどうしてここまで自分の命に無頓着でいられるのか、
俺には耐えられなかった。
アキラは、一人でいるつもりだったのだろう。
……一人で死ぬつもりなのだったのだろうか?
アキラのことだ、死ぬつもりはないと思うけど、
アキラがそこまで生きることに執着しているとも思えなかった。
「誰の助けもいらない」と、確かにアキラは言っていた。
それでも俺は、何があっても、たとえ死ぬことがあってもアキラのそばにいたかった。
こんな弱い俺だけど。
――アキラが死ぬようなことがあれば、俺がアキラを守って死ぬ。そうとまで思っていた。
この気持ちがなんなのか、俺は知っている。
でも、何があってもお前には伝えられないんだ、この気持ちは。
せめて俺がアキラを守り、俺がアキラの助けになることで、この気持ちを果たそうと思った。
たとえ、命に代えても。それが俺にとって難しいことであったとしても。
そうすれば、俺でももう少しだけ、アキラのそばにいていい気がする。
そう、思っていた。
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