Thanks for 1000hits Megu様!!




ある夜の居酒屋黒狐。閑古鳥が鳴く程ではないが、今夜も開店休業状態の店内。×××はカウンターに座って、ボスに愚痴っていた。


「……で、喧嘩して飛び出してきたの?」
「そうです」
「ちなみに喧嘩の理由は?」
「目玉焼き…」
「?」
「目玉焼きにソースをかけるか醤油をかけるかで揉めたんです」





アンバランスな恋でいこう







――時間は今朝に遡る。昨晩から×××は恋人である流輝の部屋に泊まりに来ていた。久々に二人の休みが重なったのだ。
仲睦まじく夜を過ごし、料理上手の流輝が気合いを入れて朝食を作ったまでは良かったが、そこで一つの問題が発生した。

目玉焼きの味付けをどうするか。

醤油派の×××とソース派の流輝。自分の好みの方が美味しいからと言って、どちらも頑として譲ろうとしない。
二人分あるのだから、それぞれ好きな味付けで食べればいいのに、その時の二人の頭はそこまで回っていなかった。
そして、終わりの見えない論争に痺れを切らした流輝が×××の分にもソースをかけてしまったのだ。
それに激怒した×××が「流輝さんなんか大嫌い!」と子どもの喧嘩じみた捨て台詞を残し、流輝の部屋を飛び出したというのが事の顛末。

「ボスも流輝さんひどいと思いませんか!」
「え、それは…」

ここで何を言ってもマズイことになりそうだ。大人なボスは口をつぐんで話を逸らすという賢明な判断をした。

「…×××ちゃんは流輝くんと顔が合わせ辛くてここに来たってわけだね」
「だって、許せなかったんだもん…」

謝りたいけれど、謝れない。

捨て台詞を吐いて出てきてしまった手前、どんな顔をして謝りに行けばいいのか分からない。
店に来てからも×××が携帯電話を気にしているのは、流輝からの連絡を待っているのだろう。

「まさか、流輝さんと醤油とソースでケンカするなんて思わなかった…」
「早いとこ謝っておいでよ。後になればなるほど、謝りにくくなるし」
「そうですよね…」

×××がはぁぁと大きなため息を吐いてグラスに残っていたオレンジフィズを飲み干した。
そろそろお迎えが来てもらわないと困るんだけどなー…とボスが思ったその時。


「…×××」

引き戸が開き、一人の男性が店内に入ってきた。――流輝だ。カウンターに×××の姿を見つけると、一直線に歩いてくる。

「帰るぞ」
「り、流輝さん…!?」

突然現われた流輝に、×××は面食らった。どうしてここが分かったんだろう?
×××が一人で慌てているうちに、流輝が腕を掴んで席を立たせた。

「×××、回収してくから」
「お代は流輝くんにツケとけばいい?」
「…ミッションの必要経費で落としといて」

毎度〜とボスが見送る声を聞きながら、×××は流輝によって車の助手席に押し込まれた。


*****

半ば引きずられるように流輝の部屋に入り、テーブルの前に座らされる×××。その隣に流輝も腕を組んで座る。

「……流輝さん、これは…?」
「目玉焼きにソースだなんて、有り得ないんだろ?」

テーブルの上には、白い皿に乗った美味しそうな目玉焼き。しかも隣には醤油差しが置かれている。
わけが分からなくて×××は流輝を見た。

「有り得ないでも何でもいいから、大嫌いだけは撤回しろ。案外傷つくんだぞ」
「流輝さん……」

ごめんなさい、という謝罪の言葉を言い切る前に流輝が×××の後頭部に手を回してぐっと引き寄せた。

「んっ…」

重なる唇。

「…まぁ、俺も大人気なかったよな。悪かった」

ばつが悪そうに少し横を向いて謝罪の言葉を述べる流輝。×××は思わず流輝をじっと見つめてしまった。
×××の視線に気づいた流輝が、ふっと笑ってこちらを向く。

「大嫌いなんだろ?」
「…それは撤回しました」
「じゃあ、今は?」
「………大好き」

その答えに満足した流輝は、よく出来ましたと言わんばかりに優しく×××の額にキスをする。
×××は少し照れくさそうに彼に体を預けた。

「明日はここから出勤しろよ」
「…何にも明日の用意持ってきてないです」
「なら、朝イチでアパートまで送ってやる」

ひょいと横抱きに抱き上げられ、わっと声を上げて驚く×××。流輝は意地悪く口の端を上げた。

「昼間可愛がってやるつもりだったけど、予定変更だ」
「はい?」
「今からたっぷりと可愛がってやる」

楽しそうに笑う流輝を見て、×××も苦笑いをするしかなかった。喧嘩したって何したって、最後にはこうなるのだ。
しかし、明日は仕事。効果があるか分からないけれど、一応釘を刺しておかなくては…。

「…お手柔らかにお願いします」


――目玉焼きは次の日の朝食になった。




後日。他のメンバー達にも好きな目玉焼きの味付けについて聞いてみた二人。

「俺は塩コショウかな」
「僕、ケチャップ〜」
「マヨネーズが最強だろ」

三者三様の答えが返ってきたので、×××と流輝は二人して「ありえない…」と呟いたという。



End.

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悩みに悩んで思い浮かんだ喧嘩の理由がこれでした。くだらなくてごめんなさい...
好みの味付けについては個人的なイメージ。健兄は塩コショウか醤油派。
Megu様、リクエストありがとうございました!




title by:ロストガーデン


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